夜のお伽噺

アルのオリジナル小説置き場です

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昼下がりの下り電車の先頭車両は乗客もまばらで、向かい座席で細い指でスマートフォンに興じる美青年の容姿に見惚れながら、車窓から差し込む陽春が誘う妄想の睡魔が心地よかった。
濃紺のスーツにクリームイエローのお洒落なネクタイ、誇らしげに脇に置いた真新しい高価なビジネスバックが新社会人を思わせた。緩くウェーブのかかった髪、透きとおるような肌、眉を細く整え、長い睫毛に二重の瞼、何とも言えない暖かい、柔らかい、薔薇色の、そして薫りのいい空気が彼の身辺を包んでいた。もし口を利きあえば、歳にも似合わず胸が踊り、歯の浮くような殺し文句が口を衝いた。
戸惑いを隠せぬ青年の手を取り、そっと腰を引き寄せ、青春の肌の香りが、ムッと鼻をくすぐり、艶めいた吐息が鼓動を早める。股間に添えた手の内で発熱する蕾、羞恥の表情を浮かべ、性を覚えたての少年のような昂ぶりが指先を濡らす。悩ましい突然の春の嵐に襲われ、惑乱する身体を優しく抱え込んだ。春雷がきつく瞑った彼の瞼の奥で瞬き、急いでポケットから取り出したハンカチーフに満開の花びらを散らせた。

大きな揺れで夢から覚めると、青年の姿はそこにはなかった。開いたドアから吹き込んだのだろうか、一枚の淡いピンクの花びらが座席に落ちていた。



読者の皆様に支えられ、どうにかブログ開設二周年を向かえることが出来ました。誠にありがとうございます。訳あり、なかなか更新できない状態にあります。お時間をいただきましたことを、どうかお許しください。


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コメント

拍手コメントへのお礼

A様へ

文才溢れるA様の、素敵なコメントをいただき、誠にありがとうございます。
あらぬ妄想に薄笑いを浮かべ、座席で醜態を晒さなければいいのですが、
涎たらしちゃったりして(笑)

山あり谷ありで、なかなか上手くいきませんが、こちらこそ、
これからもよろしくお願いいたします。

  • 2013/05/07(火) 23:21:04 |
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