夜のお伽噺

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あなたのロストラブ


「あなたのロストラブ」

一雨ごとにって感じで、薔薇が湿って、その湿りの中で、何かが崩れ、何かが始まろうとしています。メイ子です。
今晩は吉沢和子です。今夜も「あなたのロストラブ」でお過ごしください。
今夜は、放送、初めて男の子のお客様が、スタジオにお見えになっています。
男の子に可愛いなんて、言ってはいけませんでしょうが、和子さん、キュートって言うのかしら、とても可愛い、ボクちゃんがいらっしゃっています。

今晩は
「こんばんは・・」
緊張してますか?
「ええ、かなり緊張しています」
お名前は?
「ヒロと言います」
おいくつ?
「先月二十一歳になりました」
学生さん?
「介護の専門学校に通っています」

毎週、番組に、沢山のお便りを頂いております。女性からのお便りがほとんどですけれど、その中ではじめて、男の子からのお便りで、ちょっと、驚いたんですけれど、読ませて頂いて、もうひとつの愛の形だと納得したら、これは正しく、女の子からのお便りだと、思いました。

お手紙に書かれている、Sさんとは何処でお知り合いになったの?
「ネットです」
インターネットってことかしら、ツイッターとか何とかブックとか言うのかしら?
「ええ、そうです。僕と同じような人が登録するサイトで知り合いました」
私は良く知らないんですけれど、お互い顔を合わせることはないんでしょう?
「はじめはそうです。コメントを残したり、メールをやり取りして」
どんなメールを?
「彼から、僕の写真を見て、褒めてくれて」
このお写真がそうかしら?
「はい」

先程、和子さんと見せてもらいましたが、可愛い女性的な格好をしてらっしゃるのね。
驚いたって言ってはヒロ君に失礼だけれど、女の子と間違えられてもおかしくないような、それで?
「お礼のメールを返しました。照れ臭かったけれど、嬉しいって」
すぐにSさんから返事が来たのね?
「すぐではありませんでしたが、メールをくれました」
「一度、会って話がしてみたいなって、書いてありましたが、無理な誘いではありませんでした」
そう、Sさんはヒロ君に、相当気を遣ったのかしらね。
「そうだと思います。色々な人からメールを貰いますが、直接的な内容ばかりで」
直接的って身体を求めること?
「ええ、そんな気は無かったので、怖くて、Sさんもその一人かと思って、誘いに返事をすることが出来ませんでした」
でも、何かが二人の間に起こったのね。二人を引き寄せるようなことが。
「しばらくして、むしゃくしゃすることがあって、サイトに殴り書きして、サイトの更新を投げ出したのがきっかけでした」
「すぐに、Sさんからメールが届いて、慰めの言葉が綴ってあって、でも僕は、返事も出さなかったのに、僕のことをずっと見ていてくれていた、彼の優しさにほだされて、僕から誘ったんです」
それでお会いしたの?
「普段のままで行くけれど、それで良ければって」
普段のままって、今夜のような、普通の男性の格好ということかしら?
「はい、女の子の格好して外出なんて、絶対に無理だと思っていましたから。Sさん全く気にしていないって、食事に誘われました」

初めて、会ったSさんの印象はどうでした?
「写真は見ていたんで、すぐに分かりました。僕より年上で、仕事の帰りだったんで、スーツ姿で、落ち着いた様子でした」
お話して、いかがでした?
「もう普通の会話で、友人とおしゃべりしているような、年上の友人が出来たような、へんな話には、ならなくて、構えていた僕は、なんだか恥ずかしくなって」
Sさんは大人で、紳士で、白馬に乗った王子様のような(笑)それで、お付き合いが始まったのね?
「はい。それからも何度か会って・・」



「ゴールデンウェークに横浜の中華街に誘われて、食事した後、山下公園に行きました。そんなに晩い時間ではなかったんですが、カップルが大勢い中を、男同士で歩くというのも、ちょっと照れ臭かったんですが、Sさんに、そっと手を握られました」

うんうん、仲睦ましいカップルに当てられましたか?
「ええ、手を握られた僕は、どきどきしちゃって、Sさんに頭を撫でられて、笑顔のSさんを見たら、とっても幸せな気分になって、別れ際、Sさんの車の中でキスしました。生まれて初めてでしたけれど、自然な感じでした。正直嬉しかった(笑)」
まあ、Sさん、やりますね(笑)それで、関係が深まっていったのかしら?
「次の日、Sさんにお礼のメールをしました。すぐに返信がきましたが、Sさんからの誘いがなかなか無くて、独りで色々なこと考えちゃったり、嫌われてしまったんだと、悲しくなったりしていた矢先、Sさんからメールがきました」
どんな内容だったの?
「恥ずかしくて、言えませんが、情熱的な内容でした。今でも一字一句覚えています」

番組に頂いたヒロ君のお手紙には、Sさんからのメールの内容が書いてあります。迷惑でなかったら、私から紹介してもよろしい?
「ええ・・」

『親愛なるヒロへ、花屋の店先を飾る大輪の花の中に埋もれることなく、小さな蕾を膨らませる、あどけない花。どの花にも見劣りすることのない、その可憐な花にヒロの姿を重ねています。目を離すと、力を無くし萎れてしまいそうなその花に、私は見惚れ、話しかけ、狂おしまでの想いを募らせています』

「僕の心の中の殻が割れた瞬間でした。変身した僕をエスコートしてディズニーランドに行きたいって、誘われました」
Sさんは、女の子になったヒロ君を、ディズニーランドにデートに誘ったのね、どうでした?
「想像したことはありましたけれど、まさか、現実になるとは思ってもいませんでした。舞い上がっちゃって、一日中ふわふわした感じで、彼はどんな時も優しくて、僕の気持ちは・・」

その夜に結ばれたの?
「はい・・ディズニーランド近くのホテルで。彼に下のロビーで待っているように頼んで、急いで、お洒落して、彼を呼びました」
うんうん。
「部屋に入ってくるなり、素敵だって抱き締めてくれて、何度もキスして、恥ずかしい!」
まあ、ヒロ君が素敵だって、私にもわかります。ねえ、和子さん?
「恥ずかしかったけれど、僕の下着姿に、彼の静かな興奮が伝わってきて、僕は夢中で彼に抱きついて、彼にすべてを任せました」

私はもう、おばあちゃんですから、そうゆう事も少しは知ってはいますが、こんなこと聞いては失礼なのは承知ですが、身体の負担が辛かったのではなかったのかと、心配しています。
「言われること良く分かります。頭では理解していました、でも実際は。何度も、何度も、彼の優しさで、どうにか結ばれました。感極まって、涙が止まらなくて、手をきつく握ってくれて、彼の悦びが、僕の最高の悦びでした」

その彼とは?
「ええ、彼の急な海外転勤で、会えなくなって、寂しくて、意地悪を言って困らせて、彼がいなくなって、はじめて、僕はまだ子供だったって、ようやく気が付きました・・」
そうでしたの、すこし時間が掛かるかもしれませんが、再会があるような気がするのは、私だけではないように思います。今夜はどうもありがとうございました。


和子さん、今夜のお話はいかがでした?
「変な言い方ではないのですが、大変興味深く、伺いました」
人を好きになり、愛することは、性別など関係ないことに、改めて気付かされたお話では、なかったかと思っています。

「番組では、皆様からのお便りをお待ちしています。来週も、『あなたのロストラブ』でお会いします」

ではまた。


※中村メイコ、西沢和子による、往年のラジオ番組「わたしのロストラブ」に思いを馳せて。
一部引用しました。


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コメント

拍手コメントへのお礼

Aさん コメントありがとうございます。

一般女性が、自らの恋愛、初体験、そして失恋を告白する、
そんな深夜放送が「私のロストラブ」でした。

聞き手の中村メイコの落ち着いた語り口が、
上品なエロティックを醸し出しておりました。
そんな雰囲気を、少しでも真似が出来たらと、書いてみました。

  • 2012/07/19(木) 12:28:08 |
  • URL |
  • アル #-
  • [ 編集 ]

拍手コメントへのお礼

Y様 コメントありがとうございます。

私も眠い目をこすりながら聴いておりました。
今では子供だましかもしれませんが、当時思春期真っただ中の私には
それは刺激的な深夜放送でした。

なにより中村メイコのパーソナリティーが番組の雰囲気を
醸し出しておりました。
昨今、彼女のような大人の女性が見当たりませんね。
寂しい気がします。

  • 2015/12/07(月) 12:35:39 |
  • URL |
  • アル #-
  • [ 編集 ]

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