夜のお伽噺

アルのオリジナル小説置き場です

夜の訪問者 前編

何からお話しすればよろしいやら……。
爺の辛気臭い昔話など若い貴方様にとっては迷惑なことだと承知しております。
私のコレクションでございますか、いいいえコレクションなどと大それたものではございません。
何処の誰から聞き及んだのか存じませぬが、今夜わざわざお越しくださった貴方様にご覧頂くのも何かのご縁でございましょう。
そう畏まらずお寛ぎ頂きますようお願い申します。

そもそもそうゆうことに目覚めたのは十代の頃でございます。思春期を迎えた頃でございます。
どなた様もそうでしょうが性への目覚め興味が膨らんだ頃でしょう。
同級生に、仮にN君といたしましょうか、N君という少々おませな友人がおりましてね。
帰り道が同じ方向だったことから、毎日のように一緒に下校して寄り道もしておりました。
昔はよく空き地に処分に困ったのでしょう、エロ本が捨ててありましてね。雨に濡れて表紙が変色したようなものばかりでしたが、時々新刊書と見間違えるようなものが捨ててありましてね、
好奇心旺盛な頃でしたから食い入るように見ておりましたよ。
そんな私を見てN君は子供だましだと言ったのです。
聞けば家にはもっとすごいのがあるって言うじゃありませんか。

N君のお父様は旧大蔵省にお勤めの方で謹厳実直を絵にかいたような堅物で通っておりましたが、N君が言うには書斎にエロ雑誌を蔵書し読み耽っているとのことでした。
ある日の放課後でした。N君の留守宅にお邪魔した私は、お父様の蔵書を見せてくれと頼み込みんだのです。
渋るN君はなかなか首を縦に振りませんでしたが、私にお父様の秘密をばらしてしまった手前後に引けず、他言無用を条件に見せてもらうことになりました。

煙草の匂いが染み込んだ書斎に硝子戸の立派な本棚がありましてね、中に大蔵省発行の書物がぎっしり詰まっておりましたよ。勝手知ったN君は数冊抜き取ると奥に隠されていた小さな雑誌を取り出してくれましたね、私はその時初めてSM雑誌というものを見たのです。
青天の霹靂とはオーバーでしょうか……。内容は貴方様もご存じのものですが、確かにN君の言うように捨てられていたエロ本とは比べ物になりませんでしたよ。
その後もN君を急っついてはお父様の愛蔵書を見せてもらっておりました。


N君は男女共学の公立の進学校へ私は私大付属の男子校に進学して疎遠になりましたが、駅で同じ制服の女生徒と仲睦まじいN君の姿を何度か目撃したことがございましたよ。
私といえばむさ苦しい男子校で、勉強が出来るわけでもスポーツが達者なわけでもなく異性との付き合いなど皆無でしたね。
その時分私はニキビ面でね、それがなんだか性欲的な事柄に関係しているような気がして、恥ずかしくてしょうがなかったのです。
だからと言うわけではありませんが、電車に乗り遠い街の書店まで出向いては買い求めたSM雑誌にエネルギーの捌け口を求めていましてね、あらぬ妄想を掻きたてておりました……。
どうでしょう、喉湿しにとっておきの洋酒がございます。お付き合い願いませんでしょうか。左様で有難う存じます。

美味しゅうございますか、恐れ入ります。
付属校でしたから早々に進学が決まり卒業を控えた日のことでした。
一人の下級生から一度でいいから抱いてくれと頼まれたことがありまして、ヒロユキ君と申します。
真剣な眼差しで頼み込まれれて……。
自分では気が付きませんでしたが、私から同じ匂いを嗅ぎ取っていたと言っておりました。
男子校ならではの噂話はいろいろ聞いておりました。経験はありませんでしたが、雑誌からの受け売りで妙に性的な知識だけは豊富で同性愛に偏見はありませんでした。
ヒロユキ君は同性愛の女役になることを熱望しておりました。
いや失礼いたしました。貴方様がお出で頂いたご用件を失念しておりました。申し訳ありません。


これが私の撮り溜めたアルバムでございます。貴方様からお電話頂いて用意しておきました。
お話を伺ってご興味が惹かれるものをと考え、とりあえず貴方様と同年代の被写体のものを選んでおきました。
どうぞご遠慮なくご覧ください。
その一番古いアルバムの写真がお話したヒロユキ君です。画像が荒れているのは自分で現像したからです。
押入れを暗室に仕立てておりました。
白皙とでも申しましょうか、顔立ちの整ったいかにも秀才らしい風貌でしょ。
華奢な身体から滲み出る中性的な色香に当てられました。
二度目に関係を持ったとき持参した洗濯ロープで両腕を背中で拘束しまして、いいえ、ヒロユキ君は嫌がりませんでした。
写真を撮られることは躊躇しておりましたが、疼く身体を丁寧に慰めて信頼関係を結びました。
これがその写真です。

初めてのことで私も興奮していたと思います。
ちょっとピントが甘いですがレンズに向ける潤んだ瞳に自分の性癖が痛く刺激を受けましてね。
愛読していたSM本に女王様に傅くM男性の読み物があるのですが、自分が女王様になったような錯覚を覚えましてね。
性別を超えた欲望が自分にもあることを知らされました。
いえいえ叩いたりはしません。そうゆうことは私の性分に合わないのです。

ずっとそうですが、同性だからこそ分かる焦らしの歓びとでも言いましょうか、不自由な身体で悶え苦しみに耐えたご褒美をですね、最後の最後に与えることで私は満足しております。
それが私に出来るヒロユキ君への唯一の愛情表現とでも申しましょうか……。
可愛いですか。気に入って頂けましたか。
ヒロユキ君の膨らみきったおちんちんが破裂した瞬間は、当時の私の技量では撮ることはできませんでしたが、熱い歓びの感触はいまだに手に残っております。


どうぞご遠慮なさらずにお注ぎしましょう。身体が暖まりますから……。
こちらのアルバムの子はユウジ君と申しまして、ああここに書いてあります。1978年撮影。
夜間の写真専門学校に通っていた頃です。
仕事ではカラーで撮りますが、仰る通りコレクションはすべてモノクロでございます。モノクロ特有の陰影が好きなのです。
ユウジ君の前にスナップ程度のものが何人かございますが、こんなに撮り溜めたことはございません。
ユウジ君からはいろいろなことを学びました。
どうしたものか写真を撮ることを生業にした私に、タレントさんの写真集の依頼がある度に、ユウジ君とのことが思い出されます。

ユウジ君も好青年と言うか、どこか幼さを残した美少年とでも言いましょうか、大変おとなしくて撮影に入ってもどこか冷めていました。
男性経験はあるとは聞いてはいましたが、どこか浮かない素振りで、相手が求めることと自分の求めていることのギャップに悩んでいる様子でした。
お互いに気の乗らない撮影が続き、撮影したフィルムすべてを焼却しようとした日に、最後と思い自分の趣味をユウジ君に押し付けたのです。
女性の下着を穿かせたのです。ごく普通の股上が深い股間とお尻がすっぽり隠れる下着です。
豹変いたしましてね。
ユウジ君は勃起した性器を下着で隠すこと、肌に貼りつく下着でヒップの丸みを意識することで性癖を満足させていたのです。

この写真がユウジ君のお気に入りです。
ベッドの上でうつ伏せにさせ両腕を背中で拘束しウエストをきつく縛ってヒップの丸みを強調させています。
こちらは下着をヒップに食い込ませています。
実はユウジ君は自分の性器を見るのも見られるのも嫌なのでした。と言いましても貴方様がよくご存じのように女装するわけでも女の身体のようになることとも違う――この二冊のアルバムに約100枚の写真がございますが、性器が映っている写真は1枚もございません。

こちらは軽井沢へ撮影旅行に行った時のものです。
人気のないシーズンオフの別荘地で野外撮影したり、たった二泊三日の旅行でしたがご覧いただければお分かりと思います。
濃密な時間を過ごしました。
ユウジ君へのご褒美が気になりますか……。
アナルの折檻に耐えた褒美に下着の上から愛撫します。
漏らした体液で下着を派手に濡らして性器の輪郭が透けて見えておりましてね、この写真などがそうです。
不自由な身体を何度もバウンドさせて下着の中で射精して、烈しい絶頂を見届け、私も深い満足に浸るのです。

おや少しお酔いになりましたか。目が虚ろになっておりますね。夜はまだ長ごうございます。
それでは貴方様が一番にご興味ある女装者のアルバムをご覧頂きましょうか……。

つづく。


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