夜のお伽噺

アルのオリジナル小説置き場です

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哀悼 金子國義

「由紀子、そこにいるんだろ?」
「!……」
「由紀子!」
張り上げた男の声が部屋に響き、音も無く開いたドアに僕は男の腕の中で身を硬くさせ息をのんだ。
由紀子?……
まさか由紀子って……
音もなくゆっくりと開いたドアに、慌てて脱がされたパンツを拾い上げようとした僕は、男に両腕を背中で締め上げられ、恥ずかしい下着姿を少しでも隠そうと腰を引き前屈みになった。
「いいから、心配しないで」
「そのまま、いいね?」
男は狼狽する僕を安心させるように耳元で呟き、腕の力を緩めた。

お茶の支度をした奥様が部屋に入り、僕の存在など気にもしないような仕草でテーブルの脇に膝をついた。平静を装っても指先の震えがティーカップをかちゃかちゃと鳴らし、あきらかに動揺しているのはわかった。
「由紀子、見てご覧。藤井君が由紀子の選んだ下着を穿いてきてくれたよ」
「……」
「由紀子こっちを向きなさい!」奥様の身体がすくんだ。
「藤井君、由紀子は君のことがね、初めて家に来たときから気に入ってね」
「素直で、礼儀正しい君がね、可愛いお人形のようだと」

僕は「お人形」と聞いて初めて男の邸宅に招かれたとき、通された応接間に飾られていた幾体もの西洋人形を思い出した。精巧な造りと愛くるしいまでの表情に見惚れた僕に男は妻の大事なコレクションだと言っていた。
でもなぜ、奥様は僕のような者がお人形のようだと……僕はあの飾られた可愛いお人形とは似ても似つかわない。まして僕は純真無垢な子供ではない。


「由紀子はね、君を見たがってね」
「――あなた……」
恥ずかしそうに顔を赤らめた奥様はうな垂れ首を横に激しく振った。
「由紀子、本当のことだろう?」
「はしたない由紀子はね、いつもドアの隙間から覗いていたんだ」
「藤井君、許してくれたまえ」
「由紀子はね、幾つになってもお人形遊びが卒業できなくてね」
「さあ、由紀子、藤井君を…お気に入りのお人形をこのままにしておいていいのかい?」
「由紀子!」

男の命令に震え上がった奥様は、諦めたように床に手を付いてゆっくりと立ち上がり、足音を忍ばせ僕の前に跪いた。懇願した表情で僕を見上げた奥様は白く細い指先を股間に伸ばし、下着の膨らみに手を這わせた。
「あっ!」
「藤井君お願いだ」
「由紀子の好きにさせてやってくれないか?」
「お願いだ」

異様な成り行きに翻弄されても奥様の周到な指の動きに反応し、濡らした下着の中ではち切れんばかりに勃起してしまった僕の性器。奥様は怪しく潤んだ瞳で私を一瞥し、下着の淵から恐る恐る忍ばせた指で性器を摘み出した。
体液で濡れそぼる無毛の性器を目の当たりにした奥様は溜息をのみ込み、反り返った性器に躊躇しながらも震える指を絡ませた。
「由紀子どうだ?」
「――熱い……」
「可愛いいだろ?」
無言で頷く奥様。
男の支えをなくした僕の身体は音を立て床に崩れ落ちた。


恩師に逆らうことなど許されるはずも無い僕は、両腕を抱え股間を隠すように床に背中を丸めた。興奮の度合いを増した奥様にお尻を舐めるように撫でまわされ、這うように股間に廻された手で脈打つ性器を揉まれ、生まれてはじめて受けた女性からの歯痒い愛撫に耐えた。

「今度は藤井君に由紀子を見てもらわないといけないね」
「だめ、あなた…許して」
先生は奥様の手首を掴むと性器を握る手を引き剥がし、嫌がる奥様を四つん這いにさせ、容赦なくフレアスカートを捲りあげた。
「!!」
僕と同じ下着を穿いていた奥様。余りの驚きに声も出なかった。
「恥ずかしい…」蚊の泣くような声が耳に刺さった。
「藤井君、由紀子は君と同じ下着が穿きたいと言って聞かないんだ」
「由紀子、そうだろ?」
「嫌……」

奥様の下半身を抱え込み、僕に見せつけるように尻を突き出させた男は、奥様の真っ白い豊満なお尻に食い込む葡萄色の下着を一気に引き下ろした。
「あなた!」
「嫌!嫌!」
はじめてみた女性器…発情した女の匂い。
欲情で分泌した体液で白濁した陰毛が股間に張り付き、真っ赤に熟れた口を開いていた。僕は清楚な奥様に似つかわしくないグロテスクな性器に奥様の本心を見た気がした。
「本当にいやらしい女だ。由紀子は」
「藤井君に悪戯してこんなに悦んでいる」
「あ、あなた……」
奥様は床の冷たいはだに身体を投げ出し目を細め、全身を男の持て遊ぶままに任せていた。


それから僕は毎晩のように男の性器を頬張る奥様の妖艶な表情と
熟れた紅色の唇の幻影に襲われ
濡れた粘膜の擦れる淫靡な音
興奮と快感で掠れた呻き声にうなされ
狂わんばかりの激しい女の絶頂に

嫉妬した。



耽美、退廃的な作風で知られる金子國義画伯が3月16日、お亡くなりになりました。
富士見ロマン文庫をはじめ多くの書籍の装丁画を手がけ、敬愛する画家の一人であり、私は氏の作品からいくつもの創作のヒントを頂いておりました。
おそれながら哀悼の意を込めて作品から感じ取った拙文を載せました。
ご異論は多々あることは十分に承知しています。
いつもと違うお話ですが、どうかお許しください。
ご冥福をお祈りいたします。



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コメント

金子國義さんは私、あまり良く知らないのですが、検索してみたら、ああっ、この絵はなんかどこかで見たことがある、と言うものばかりでした。
澁澤龍彦の本の表紙ってほとんどこの方だったのでは・・・という気が・・。
ひょっとすると加藤和彦もそうですかね?
富士見ロマン文庫は良く知らないんですーすいません。
絵はよくわからないんですが、記憶に残ってる、ということは門外漢にも伝わるなにかがある、ということなんでしょうね、きっと。
私が語れるようなことはなにひとつなくてひたすらお恥かしいのですが。
小説ですが、私、世代的にフランス書院文庫とか思い出しました。
ああっ、奥様が女装だったら・・・などと思ったりもしましたが、追悼という意味合いを含むとすれば、その世界観を見事形にされている、と思います。
同じ下着をはかせる、というのが、奥様のゆがんだ淫欲を感じさせていいですね。

  • 2015/03/25(水) 00:33:22 |
  • URL |
  • ネジ #-
  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

ネジちゃん コメントありがとうございます。
いつもと違う雰囲気のお話で、読者の皆様には無理やりお付き合いいただいてる次第で
恐縮です。

金子國義の絵は好き嫌いは別として、どなたも見覚えがあるかと思います。
ファッショナブルでエロティック、古い言い方ですがポップでもあり、
十代の頃の私には横尾忠則と並ぶ、お気に入りの画家で、特に中性的なモデルの作品に惹かれておりました。

おっしゃる通り、澁澤龍彦とは親交があり、いくつか作品を残しているようです。
多彩な才能からレコードジャケットも手掛けていたのかもしれません。
島田雅彦の『ドンナアンナ』の装丁画もそうで、収録作品「ある解剖学者の話」
と共に、いまだに私の記憶に残っています。

富士見ロマン文庫は黒い表紙に金子國義が装丁画を描き、海外のエロ話を翻訳したものでした。
真面目な書店には置いてなくて(笑)出掛けた先で見つけては手に取っていました。

>奥様が女装だったら…
そうか、その手があったか!創作のヒントを頂きましたよ。

  • 2015/03/25(水) 12:33:08 |
  • URL |
  • アル #-
  • [ 編集 ]

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