夜のお伽噺

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レクターちゃん 4話


部屋の闇の中に色白の美しい少年の顔が浮かんだ。どこか退廃の香りを纏った美しさに満ちていた。濡れた黒い瞳の中に、私の顔が小さく映っていた。
私はその顔を一目見たとき、胸の中にさざなみがわき立ってきたような気がした。同時に触れてはならないものに触れたような後悔も駆られたが、私は少年の妖異な魅力の完全な虜になっていた。
少年の取った行動は不思議だった。私には純粋に誠実だったが、自ら望んだ被虐的な立場に自足している様子だった。少年は私の前で恥ずかしがり、怯えながらも声にならない愉悦を感じていた。そして、まだ見ぬ情欲の塊を描いては、欲動の淫夢にうなされていた。
しかしそれは夢ではなかった…



日ざかりの午後でした。
真夏の炎暑とは無縁のここは、季節もなければ、風が吹くこともありません。漂う消毒臭は人の営みさえも消し去っています。ナースステーションで面会の手続きを済ませ、磨き上げられた廊下に歩を進めると、私を誘う熱と手を感じます。シーツと枕のありえない白さ、そこに傷ついた吉永美南の横たわる姿。思いっきり不健康な、不道徳で淫蕩な感情が目を覚まします。

「吉永…」私は上掛けの上から吉永君の身体に手を置き、そっと揺すりました。
呼びかけに目を開けた吉永君は私の姿を見定めると、瞼を大きく見開き嬉しそうに微笑んでくれました。
「あっ、先生、来てくれたんですね」
入院生活にも慣れたのか、十日ぶりに再会した吉永君は、だいぶ落ち着いた様子でした。日に当たらないせいか、色白の肌が陶器のように透き通っています。
「具合はどうだ?」
「もう痛みはなくなりました。でも身体が思うように動かせなくて」
「母がいなくなったら、何もかも看護師さんの世話になって、その度にナースコールを押すんですが、なんだかそれも鬱陶しくて」
両手を固定されたギプスの脇に置かれたナースコールに目を落とし、苦笑いしました。

私と吉永君との関係、いや、特別な関係など何もありませんが、二人の共通の想いを、暇を持て余した同じ病室の入院患者や看護師たちに悟られることのないよう、私は注意深く振舞います。
「吉永、食事はどうしている?」
「まだ箸が握れなくて、食べさせてもらっています」
「そうか・・不自由だな。何か欲しいものはあるか?」
窓に顔を向け、少し思案した様子の吉永君は、なぜか照れ臭そうな表情を浮かべました。
「先生、冷たいものが食べたい。寝てばかりだから、外の景色も見てみたいです」

看護師の了承を得た私は、不自由な吉永君を慎重に抱きかかえて車椅子に座らせ、外来病棟のカフェに連れ出しました。両腕と左脚にギプスを巻き、車椅子に座る美少年の痛々しい姿に、カフェで寛ぐ見舞い客の哀れみと好奇心の視線が集まる中、模範的な介護人を演じる私は、案内された窓際の席に、ゆっくりと車椅子を押しました。

眺望の良い、陽の光が入るカフェは、それだけで吉永君の気持ちが晴れ晴れしたようで、新宿の高層ビルを遠くに眺める吉永君の顔に、高校卒業を間近にしたあの日、美術室から外を見詰めた美しい横顔が重なります。
注文したアイスクリームを、私はスプーンで吉永君の口に運び、それを美味しそうに舐める濡れた唇が、他のテーブルで談笑するお客さんたちを気にしながらも、私にあらぬ妄想を引き起こさせます。
下卑た妄想をかき消すように、何度も脚を組みなおす私のことを知ってか、くすっと笑った吉永君は意味深な上目遣いで、私の飲みかけのアイスティーまで飲み干し、ナプキンで吉永君の口を拭った私に、満足げな表情で笑みを浮かべました。



会計を済ませた私は、吉永君のお母さんとの約束事を思い出し、エレベーターホールに車椅子を止めました。
「吉永、おばあちゃんの具合はどうなんだ?」
「一昨日、看護師さんに頼んで、母さんに電話したら、だいぶよくなったって言ってた。落ち着いたら、すぐ帰るって言うから、僕はひとりで大丈夫だからって言っておいた。看護師さん笑って聞いていたけれど」
「そうか…」
大怪我を負った息子を、ひとり病院に残した母は、毎日でも息子の声が聞きたいに違いありません。母の気持ちを察し、私はポケットから携帯を取り出しました。
「ここなら携帯掛けても問題無いだろうから、お母さんに電話しておこう」
短い呼び出し音に電話は繋がり、電話口で恐縮するお母さんの姿が目に浮かびます。電話を替わった吉永君の元気な声に、安堵するお母さんの声が私の耳にも届きます。何度も礼を述べるお母さんに、私は頭を下げ電話を切りました。



エレベーターのボタンを押そうとした私の指先が、吉永君の発した言葉に止まりました。
「先生、トイレに行きたい」
「――トイレ?」
今の吉永君は自分ひとりではトイレに行けないことは分かっています。看護師の介助が必要で、病室に戻れば看護師を呼ぶことが出来ます。
「病室まで我慢できないかい」
「先生、できない…」
蚊の泣くような声で訴え、頭を振る吉永君に、狼狽しながらも抑えられない衝動にかられた私は、廊下の奥にある身障者用のトイレに車椅子を向けました。

トイレの大きな引き戸を開き、清潔な広いトイレに車椅子ごと吉永君を押し込みました。
病院という場所柄、ましては介助を必要とする患者に付き添い、トイレに一緒に入ることは、誰が見ても怪しいことはありません。引き戸は音も無く閉まり、吉永君と二人だけになったことを実感した私は、後手で鍵を掛けました。
車椅子を壁際に固定して無事だったスリッパを履いた片足の床に下ろし、吉永君の両脇から背中に腕を廻し引き寄せました。吉永君の微かな汗の匂いが私の鼻腔をくすぐります。そして何を思ったのか、頭を傾けた吉永君の唇が私の唇を塞ぎました。
「せんせい・・」
曇った声を漏らし、うるんだ瞳で私を見詰め、興奮した唇を震わせます。
「――せんせい・・ぼくのからだ・・みにくいですか・・」
「美南、お前…」
美南は私の性癖を理解していました。高校二年の美術教科の授業で話したことを覚えていたのでしょうか。身体的欠損、手足が不自由な者に性的なフェティシズムを感じてしまう私をここに誘った、美南の思惑に頷きました。

「綺麗だ・・」
美南の顔を両手で挟み、私は唇を深く合わせました。美南のつぼみのような唇が花と開き、私は美南の軟らかな舌を絡め、荒げた息を呑み込みます。
顎から首、肩、胸にかけて指でなぞり、目を閉じた美南の身体が震えるのが分かります。太腿をさすっていた手を股間に滑らせ、欲情の塊が指先に触れました。手の平で塊を包み込み力をこめると、美南は不自由な身体をむずがらせては、私に催促します。

床に着いた右足を踏ん張り、腰を浮かせた美南のパジャマを下着ごと足首まで引きずり落しました。飛び出した薄い陰毛に脈打つ美南の性器。けなげで可憐な桃色の亀頭は、早くも漏らした淫水で濡れています。夢にまでうなされた、美南の性器を目の当たりにした私は感慨もひとしおでした。
「せんせい、ぼくの・・おちんちん・・いじめて・・・」

脳が沸騰し無数の気泡を吐き出し、深く大きな欲望が私の身体を突き上げます。私自身が興奮して、性器を握る手に、つい力がこもってしまいます。
美南の口から零れる甘く切ない喘ぎを聞き、同じ器官を持った者同士の秘密の愉悦が押し寄せてきます。
くちゅくちゅと擦れる卑猥な音と匂い、引きずられるような喘ぎ声が渦をまき、亀頭から溢れる絶頂への呼び水が倍増します。
びくんと美南の性器が大きく震え、一気に膨張します。美南の唇から言葉にならない声が漏れ、待ち焦がれていた身体は絶頂の波に容赦なくのみ込まれ、ほとばしる精液が、何度も床を叩きました。
車椅子に身体を波打たせ、美南の呻く掠れた声で、恥ずかしながら私まで股間が濡れてしまったのが分かりました。
とろんと蕩けた瞳で、舌先を覗かせて待っている美南の唇に、私はそっと唇を合わせました。

つづく。

古いお話にも拍手を頂き、感激しております。
ありがとうございます。




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テーマ:自作BL小説 - ジャンル:小説・文学

コメント

<閲覧者の方々へ>
これから4話を読まれる方は、このコメントをお読みにならないでください。
本文の内容に触れています。

トイレに美南君がさそった?後の展開、かなりドキドキしました。
なんせレクターちゃん、ですもん。
私、ものすごいスプラッターな想像が頭の中で渦巻いてまして「ああ、美南君が陵辱された後、食われてしまうのかあっ!」と手に汗握ってしまいました。
いや、よかったです。
ほっとしました、本当に。
そんな想像をしてあわててるのは多分私だけでしょうけど、はい。
それともこのあとさらなるどんでん返しがあるのでしょうか。

「〇頭から溢れる絶頂への呼び水」、いやこれ見事な美文だなあ、と思いました。
これはなかなか書けないと思います。
脱帽です。

なんだか陶然と耽美的で、昔の記憶がほじくりかえさりたりもしました。
とりあえず興奮しちゃったから責任とって!って感じです。
うーわけのわからぬコメントすいません。

はい、今日は早く寝ますです。
必ず。
えへへ。

  • 2014/10/16(木) 21:01:47 |
  • URL |
  • ネジ #-
  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

ネジちゃん 読者皆様にもお気遣いいただき、ありがとうです。

病院という人目の多い場所柄、二人の関係をどこで発展させるか。
まあ、トイレしか浮かばなくて。でも「トイレ」という単語に
拒絶反応を起こす方がいらっしゃるような気がしています。

カニバリズムはありませんが、異常な精神で不完全な肉体へ共感が
愛情の基盤になるお話になればよいのですが、どうなりますやら・・・

責任はとれませんが、興奮してくれてうれしいです。

コラ!早く寝なさい!




  • 2014/10/16(木) 23:50:31 |
  • URL |
  • アル #-
  • [ 編集 ]

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