夜のお伽噺

アルのオリジナル小説置き場です

男 2


いるはずのない男を探してしまう自分が怖かった。仲間からの夜会の誘いを断った晩、夜が更けるにしたがい自暴自棄の気分と絶望が舞い戻り、僕は部屋を飛び出した。
夜空はよく晴れて群青色に染まる中、いびつに欠けたタイルのような青白い月の光が枯芝の公園の小道を照らしていた。咲き誇る山茶花の植え込みに寂しく置かれた錆びたベンチが僕を待っていた。思い出の数々が心から飛び出し、夜空に舞い散るように脳裏に浮かんだ。
付き合ってきた相手は、すべて誰かのものだった。恋人のいる男、待ち人のいる男。終わりが見えているような関係しか結んでこなかった。寂しくはなかった。新鮮な興奮を求めて相手を変えたいという欲望が勝っていたはずだった。
――あの男に出逢うまでは・・・

僕が男とつきあったのは半年と短かかったけれど、はじめて出遭ったのはしばらく前のことだった。僕の行きつけの先に必ずと言っていいほど男がいて、言葉を交わすようになったのは自然の成り行きだった。誘いの言葉を言いよどむ男の袖を引いたのは僕だった。男の紳士な態度と気遣い、自分の欲望を後回しにする不慣れな愛撫、初々しい男の興奮と男の上げた愛の叫びを全身で受け止めた歓びと感動。同性とのセックスに好奇心を剥き出しにする男たちに慣れた身体が戸惑いながらも馴染んでいってしまった。愛されていると実感したのは初めてだった。

男の残していったものをすべて捨てた夜、数人にしか教えていないプライベートな携帯電話が鳴った。表示されたのは男からの番号だった。鳴り止まぬ着信音を僕は無視し続けた。
暗闇に点滅する携帯を見詰め、寂しくなかったはずの僕は涙が溢れた。生まれていままで人を愛することはなかった。恋をしたのは男が初めてだった。恋愛感情をもったのは男だけだった。それでも関係が長く続くことはなかっただろう。男を取り巻く環境と世間体が男を苦しめていることに気が付いていた。

いつものことだろ?
ああ、いつものことさ・・でも、真剣になっちゃった・・
バカだな、真剣にさせたのはおまえなのに
自分が泣いてることを無視して言葉を吐き捨てた。
嫌いになった、飽きた、飽きたんだよ!
大嫌い、大嫌い・・大嫌い・・・

震える唇から、胸のつぶれるほど吐いた白い溜息は、濡れた頬をいつまでもなぶった。




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コメント

あけましておめでとうございます。

さて、今年はどんなお話しを読ませていただけるのか。

楽しみにしております。

本年もよろしくお願い致します。


あやか

  • 2014/01/07(火) 18:00:08 |
  • URL |
  • 夏川あやか #ajW0yqNQ
  • [ 編集 ]

Re: あけましておめでとうございます。

あやかさん、ごめんなさい。

ハナミズキの季節に新年の挨拶なんて、間抜けですね。

今年もよろしくおねがいします。

  • 2014/04/29(火) 21:22:35 |
  • URL |
  • アル #-
  • [ 編集 ]

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