夜のお伽噺

アルのオリジナル小説置き場です

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チコ 9



神が決めた性別までも曖昧にした、妖しいまで魔力がその子の全身から満ちていた。
綺麗に染めた栗毛色の柔らかな髪が額にかかり、顔色は絹布のように白く、赤い唇は磨いた果実のようだった。

日本画の老絵師の喜寿の祝いの会で見初められ、渋る芳村を老獪な取引で口説き落とした。芳村との絶対服従の誓いに拒むことは許されず、老絵師の求めに応じてチコは鎌倉のアトリエに出向いた。
邸宅の玄関に立つチコの姿を見るなり、破顔させた老絵師の好々爺の態に、チコは戸惑いながらも、締め切った和室で老絵師に言われるまま全裸になり、和服に着替えさせられた。
姿見に映るチコの姿に目を細め、「待ちきれんかったよ」と、長い廊下をチコの手をいそいそと引き、邸内の奥に閉ざされたアトリエに招き入れた。


竹林の裏庭に面したアトリエの紫檀の床に跪く、チコの背中から忍ぶように寄り添い、細い肩にそっと両手を置くと、チコは息を詰らせ身体を硬くさせた。
「――ええね」と有無を言わせぬ老絵師の念押しに無言で頷いたチコは、背中で組まされた細い手首を朱色の帯締めで締め上げられ、身体の自由を奪われた。
急遽、チコの為に誂えた、蓬色の単衣の袖を無理やり引っ張り、大きく開いた襟から肌蹴た、なで肩の華奢な身体は薄っすらと艶づき、幼女のような乳首を老絵師に晒した。割った裾を端折り、貝の口にきつく結んだ柿渋の帯に挟み込んだ。
足袋より白い、弛みのない腿と脹脛、端折った裾から見え隠れする少年のような小さな尻臀。緊縛の歓びを知るチコの艶やかな唇からは、早くも熱を帯びた吐息が洩れていた。顎を少し突き出し、腰を左に捩り、肌蹴た胸を見せつけ、背中を少し反らせた姿勢をとらせた老絵師は、チコに向い立膝を付き、麻紙に身をかがめた。


竹林を揺らす、海鳴りとも山鳴りとも聞える低い唸りがめぐるなか、射るような老絵師の視線が往復し、渾身の鉛の描線が立てる音が、隠しようのないチコの興奮を露にさせる。
チコの身体の変化を知ってか知らぬか、気迫こもる老絵師の鋭い眼光にチコは息を殺し耐え続けた。
まるで視姦されているような、老絵師との妖しい関係に羞恥と侮蔑を煽られ、興奮した性器が下腹に触れる。耐え切れなくて洩らした溜息に、老絵師の手が一瞬止まったが、薄い唇の端を吊り上げて意地悪そうに笑うだけだった。

欲望に全身が火照り、痺れた膝が震えはじめ、チコの身体が揺れだした。老絵師はゆっくり大きな息を吐き、静かに筆を置くと、疲労した腕を擦りながら満足したように笑みを浮かべた。
「知永君、終わりましたよ」
「よう、辛抱してくださった。ご褒美せな、あきませんね」
老絵師は文机の引出から短冊に切った和紙を取り出し、器用に一本の紙縒りを作り、重そうに身体を起こした。
紙縒りを咥えた老絵師は、尻餅をついたチコに微笑ながらにじり寄り、異常な加虐の炎をくゆらせる老絵師の濁った瞳に恐怖心に駆られたチコは、思わず後退りした。


つづく。



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