夜のお伽噺

アルのオリジナル小説置き場です

音楽夜話 最終回

こんばんは アルです。歌は世につれ世は歌につれ、星の数ほどある名曲の数々、その名曲の中に登場する主人公が歌ったり聞いていた曲をあれこれ推理するプログラム『夜の名曲探索』のお時間がやってまいりました。お相手はこの方!
「ウィース!みなさん、こんばんは。2年ぶりの登場、都内某高校に通う、花なら蕾永遠の17歳佐々木好和どえース」

好和ちゃんお久しぶり、どう調子は?
「ボチボチでんな。それにしてもアルさん更新に時間が掛かりすぎ。読者のみなさんブログ離れしちゃったよね。還暦迎えたら急に老けましたね」
――自分でも老けたと思うよ。体力気力が落ちたね、やらなきゃいけないことが山積みなのに一日があっという間に過ぎちゃってさ、面目ない。
言い訳じみているけれど、中途半端だった『チコ』の落とし前がやっと付けられたよ。
『チコ』はもともとSM話から派生した主従関係を柱にした話しにするつもりだったのだけれど、上手く書き進められなくてね。
昨年暮れ主従関係の話を書くことを宣言しちゃったものの悪戦苦闘してね、10か月も掛かっちゃったのよ。
読者の皆様が要望するSM話とは全く違っていることは承知しておりますデス。

「ところでアルさん今回の『夜の名曲探索』なんだけれど……」
実は皆様にお知らせがあります。14年8月30日の『夜の名曲探索』で10以上の拍手を頂いたら『夜の名曲探索二夜』を書くことを宣言しておりました。親愛なる読者の皆様から貴重な拍手を頂き、あれよあれよと9拍手までこぎ着けましたが、残り1拍手を頂くまでに1年と数か月。(笑)今年初めにどなたか存じませんが拍手を頂き、10名様限定とばかりにネタを仕込んでおりましたよ――しかし……。

「しかし、どうなっちゃったのよ。二夜では玉置浩二の曲を探索することになっていたでしょが。仕込みが出来なかったとでも言うのオイ!」
好和ちゃん、仕込み云々ではなくて、『夜の名曲探索』が著作権違反で記事が削除されちゃったのよ。
「著作権違反!デスカ!こんな場末の寂れたブログの記事が著作権違反……」
そう。いろいろ調べたのよ。個人のブログに直接動画やリンク、さらにはキャプチャー画像もアップすることは法律違反ということね。著作権の強化が叫ばれている昨今、勉強不足でした。反省しています。

――ということで、今までのような体裁の音楽記事はアップできないの。不定期にアップしていた『音楽夜話』は今回が最終回ということで……音楽記事に拍手、コメントを頂いた読者の皆様にお詫び申し上げます。


「チェ、ジジイのおふざけに付き合ってやろうとしばらくぶりに登場したのに……。まあ法律違反じゃしょうがないな。アルさん今更だけど、取り上げるつもりだった玉置浩二の曲って?」
『メロディー』
歌詞に♪みんな集まって、泣いて歌ってたねぇ~という一節があって、泣きながら歌った曲は何だったのか……気にならない?
「ふ~ん。今回もどうでもいいようなこと気になりますね」
「確かに『メロディー』いい曲ですね。玉置浩二、巷では奇人奇才とか言われていますが、作曲の才能歌の上手さはダントツですよね。ヨッシャ!アルさんのオフザケに好和お付き合いしませう」
オイ!
――まあ、好和ちゃんがそう言ってくれるなら気を取り直して『夜の名曲探索二夜』取り上げまするは、玉置浩二の『メロディー』。
好和ちゃん曲紹介お願いします。

「ウイッス。『メロディー』は安全地帯休止後1996年ソロでリリースした玉置浩二作詞作曲のバラードの名曲です。少年時代から彼が聞いていた歌へ、リスペクトを込めたと語っています。それではレッツ・プレイ!と言いたいところだけれど……やりにくいですネ。エヘヘ」

「確かに♪みんな集まって、泣いて歌ってたねぇ~という歌詞がありますね」
好和ちゃんは、彼と仲間が泣きながら歌った曲って何だと思う?
「彼は学生時代からバンドを組んでいたから、洋楽のコピーもやっていたでしょうから洋楽かなとも思うけれど、みんなで口ずさむとなると、やっぱり邦楽でしょうね。その後の『安全地帯』としての活躍を考慮すれば、当然邦楽かと。あと男性シンガーの曲だと思いますね」
ホイホイ。さすが好和ちゃん目の付け所がいいわ。私も邦楽だと思う。以前どこかで彼は沢田研二が好きだって見聞きしたことがあるのよ。
「ジュリーですか……ヒット曲多いですよ。現在58歳の彼が少年時代に聴いていたとなると、『タイガース』?」
そう、私ね『タイガース』の名曲『銀河のロマンス』かと思うのよ。

「う~ん『銀河のロマンス』ですか……」
好和ちゃん、その顔は異論があるようね。
「ええ。『銀河のロマンス』が流行ったのは1968年、グループサウンズ絶頂期の頃ですね。今から48年前彼が10歳の時ですね。時代的には合っていると思いますよ。合っているけれど『メロディー』の歌詞にノートに書いてあるピースマークというフレーズが出てきますよね」
うん出てくる。
「僕思うに、ピースマークが日本で一般的に使われだしたのは70年代からだと思うのですが?」
好和ちゃん、今回はいつになくマジメね。
「――僕がこのブログに登場するのは今回が最後かと思うと……(ノД`)」
まあ音楽関係の記事は今回が最後だけれど、またどこかで呼んであげるから。気を取り直してヨシヨシ。ということはもっと後の曲?
「のような気がします。確かにバラード曲『銀河のロマンス』は覚えやすい歌詞で、あの頃誰もが口ずさんでいましてけれど、どちらかと言えば独唱曲で、みんなで歌う合唱にはちょっと……」

フムフム。となると『タイガース』解散後のジュリーのソロデビュー曲、『君をのせて』かしら?
「1971年発売『君をのせて』。サム・クックのヒット曲を彷彿させる名曲ですが、これも合唱にはどうかな」

フムフム。それでは好和ちゃん、君が選んだ曲は?――オフザケするなよ浅田美代子はもう使えないぜ。
「エヘヘ。分かっておりやす。演歌の名曲とも違います。それでは僭越ながら、僕の選んだ曲は(ドラムロール)堺正章『さらば恋人』!♪さよならと書いた手紙~」
ホヨ~。
「同じく1971年発売『さらば恋人』。『スパイダース』解散後のソロデビュー曲、作曲は歌謡界の巨匠筒美京平、作詞はフォーク界の詩人北山修。当時流行っていた洋楽ポップスを驚愕するメロディーとアレンジ。誰でも口ずさめる歌詞。独りで歌ってもよし合唱してもよし。いつまでも色褪せない名曲でしょ。どうよ!」

お見逸れいたしました。マチャアキとは思いつかなかったわ。センチメンタルな別れの歌ね。♪悪いのは僕のほうさ、君じゃない~胸に染みる。私も異論はないわ。
「結論!玉置浩二『メロディー』の中で歌われた曲は『さらば恋人に』決定!」
パチパチ!

そうそうマチャアキで思い出したわ。好和ちゃんマチャアキの切り抜きを持って美容院に行って、こうゆう髪型にしてくれと頼んだら美容師に大笑いされたことがあったわよね。
「ええありましたよ。ミック・ジャガーって言ったって分かんないだろうから。でもマチャアキ、ファッションセンス抜群だったんですよ。今もそうだけど」


今回も深夜のファミレスでの与太話よろしく好き勝手なことを言い合った『夜の名曲探索』いかがでしたでしょうか。登場する名曲にご興味を覚えた読者の方が、動画検索にて視聴してくだされば嬉しい限りでございます。それでは皆様……
「チヨット、チョット待ちなはれ!もう終わっちゃうの?音楽記事の最終回でしょ。僕の出番がなくなるのに、アル公冷たくない?」
まあそうね……。
「いつかキャロル・キングのことを書くって言ってたよね。前回『スローバラード』の歌詞の中でラジオから流れていた曲を探索したとき、キャロル・キングの『will you still love me tomorrow』に決めたときにさ。もうチャンスないよ。キャロル・キングに音楽の嗜好を宗旨替えされたって常々言っていたくせに」

確かに……。でも今までのようにリンクも貼れないし、そもそも音楽の話題に興味を持ってくれる読者の方は少なくて、ブログを訪れてくださる皆様の求めるものとかけ離れているから……。
でも折角好和ちゃんを呼んだんだから、もう少し与太話続けてもいいわ。
「そうこなくっちゃ。ケネディセンター名誉賞のことでしょ?」
そう名誉賞のこと。ウィキペディアによると、1978年から毎年アメリカで優れた芸術家に贈られる賞で、受賞者の発表は9月、授賞式は12月第1日曜日にホワイトハウスで大統領夫妻から贈呈される。祝賀公演が12月にケネディセンターで開催され、CBSテレビで録画放映されるとのこと。

「アカデミー賞やグラミー賞に比べると、意外と新しい賞ですね」
そうなのね。賞の選考基準は優れた芸術家にということだけれど、受賞者の顔ぶれをみると年功序列というか、存命中に受賞をさせる配慮かしら50年代に活躍した大物から受賞が決まっているように思えるわ。
「そう言われれば、今話題のディランは97年、スティービーは99年ですね。それでキャロル・キングがやっとこさ2015年に受賞することなったと」
キャロルおばさん72歳よ。アメリカンポップスへの貢献度を知る者にとっては、いささか遅いような気がするけれど、バカラックは受賞しているのかしら……。
キャロル・キングの受賞が決まってから、祝賀公演の模様がアップされるのを今か今かと待っていたわ。

「トリビュートパフォーマンスのことですね」(kennedy center honors 2015で動画検索してね)
受賞者には出演者が誰だか事前には知らせてないそうよ。キャロルの曲をレコーディングしたジェイムス・テーラー(up on the roof)は順当だわね。どこかでキャロルとの関係があるのでしょうね、サラ・バレリス(you've got a friend)もなかなかね。でも圧巻は最後に登場した大御所、アリサ・フランクリン(natural woman)!!キャロルがアリサのために作曲した、リズムアンドブルースの秀作ね。ちなみにアリサ、キャロルと同じ歳なのね。
重病説が伝わり、歌手生命が危ぶまれていたと聞いてはいたけれど、歌のパワーは衰え知らずで、オバマが涙ぐむ気持ちも私にはわかる。何度見ても胸にせまるものがあるわ。

「僕も目頭が熱くなりました。アルさんもう一人忘れてはいませんか?」
好和ちゃん、忘れていませんよ。キャロル・キング以外の受賞者に日本人初の小澤征爾、ジョージ・ルーカス、リタ・モレノ、そして女優シシリー・タイソン。
シシリー・タイソン、マイルスの元妻だったことぐらいしか知らなかったんだけれど、自らの名前を冠したスクールを創設して、慈善事業にも心血を注いでいる女優なのね。

彼女が劇中で歌う讃美歌(blessed assurance 祝福の保証 )をトリビュートしたのが、なんとまあ、私のフェイバリットディーバ、シシ・ワイナンスだったのよ。感涙ものよ。ジラフ柄のワンピースがとってもオシャレ。アリサと並ぶ素晴らしいパフォーマンス!
いいもの見せていただきました。以上。好和ちゃん言い残したことある?

「ハイ!僕もケネディセンター名誉賞つながりで、先ほど話に出ましたが、1999年に受賞したスティービー・ワンダーのトリビュートパフォーマンスをご紹介したいと思います。(kennedy center honors 1999で動画検索してね)
26分20秒の動画ですが見どころ満載!ピアノがハービー・ハンコック、テイク6、スモーキー・ロビンソン。やはり圧巻は盲目の女性ジャズシンガー、ダイアン・シューア―が歌う(I just called to say I love you. 心の愛)。スティービーならずとも涙が出ます」

好和ちゃんお疲れ様です。音楽夜話はこれにてお開き。二人の与太話に最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
「サバラ!」


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チコ 15

その晩夕食を済ませた公彦はファッション雑誌を広げた。
女性誌など一度も買ったことはない公彦が衝動的に買ってしまったは、微笑む黒田知永子を一目見て、
なぜか惹かれるものを感じてしまったからだ。
それは美人に目がいくといった普通の成人男子の目線に他ならないと自覚しはていたが……。

黒田知永子はこの雑誌の専属モデルのようで、彼女のスタイル画が巻頭から多くのページを占めていた。
ページを捲っては食い入るように見つめる公彦の様子は、贔屓のファッションモデルを真似ようとする
女子に見えたかもしれない。

付きあ合っていた男は芳村のような嗜好はなかった。
年齢相応の素のままの男子が好みで、公彦に特別な要求をすることはなかったが、
公彦に向ける男の興奮は十分すぎる程で、公彦もそれが嬉しく、
男以上の興奮を晒しては男の望む行為を受け入れていた。
身体の自由を奪われ羞恥に全身を紅潮させ、溢れる快感を滴らせては男の許しを哀願していた。

風呂上がりの洗面所で鏡に向かった公彦は、濡れた前髪を両手で掻き上げてみる。
やや面長の見慣れた年相応の男の顔。二十歳過ぎても髭は薄く、職場の女子からは色白だねと揶揄されている。
顔を鏡に近づけ横顔を映し、上を向きそして俯く。
頬を膨らませ唇を突き出してみる。どの角度から見ても男の顔にしか見えない。
ばかばかしくなった公彦は洗面所の灯りを消した。


ある経済団体の職員である公彦の日常がはじまる。
作成した資料を持参して会員企業へご機嫌伺いに出向く。行政の経済担当者との会議、企業イベントの手伝い。
安定した職業と言われればそれまでだが、贅沢な悩みだが利益を追求する企業と違い、
社会人の本分を見失うこともある。

退社時間を見計らったようにリュウからメールが届いた。
リュウから相原を紹介され、相原と面会したことは報告済みだったが、
相原から会うように指示された芳村という男と会ったことは、
男の第一印象の余りの悪るさからリュウにはまだ知れせていなかった。
事の顛末を気にしたメールの文面に公彦は夕食の誘いを受け返信した。

買い物客で賑う昼の新宿は夜のなると華やかな色が灯りまた別の表情を見せる。
リュウから指定されたビルの地下にあるビストロのドアを開けると、すでにテーブルに座っていたリュウは
公彦に片手を上げた。リュウも仕事帰りなのだろう、着慣れたビジネススーツの襟元を緩め寛いでいた。
挨拶代わりの乾杯を済ませ、相原を紹介してくれたことに改めて礼を述べる。
紹介した手前どうしたか気になっていたよと、リュウは仕事仲間の後輩を気遣う先輩のようだった。

相原とは馬が合ったのかい。
リュウの揶揄するような問い掛けに公彦は、相原に悩みを打ち明け我儘な寂しさを吐露したこと、
真摯に耳を傾けてくれる相原に付き合っていた男の姿をダブらせ、
初対面ながら穏やかな相原に惹かれてしまったことを話した。
さすがに相原から恥ずかしい身体検査を受け欲求不満を中途半端に煽られ、
続きは芳村にしてもらえと帰されたことは言えなかったが。

それで相原は……冴えない表情を浮かべる公彦を見て成り行きを察したリュウは溜息をつき肩を落としたが、
公彦の話の続きに、傷心の公彦を労わるように運ばれた料理を皿に取り分けていたリュウの手が止まった。
えっ、別な男を紹介された!
相原の性癖を少なからず知るリュウは、公彦を必ず気に入ると考えていた。
予想もしていなった展開に思わず声を上げた。

黒田知永子というファッションモデル、名前の知永子からチコと呼ばれていることもリュウは知っていた。
その目つきの悪い芳村という男は、チコのようになれと言い残し帰ってしまった。
付き合うかやめるか決めるのは公彦次第ということか……腕組みしたリュウは公彦の話を反芻する。
不快な気分にさせた芳村の鼻を明かしてやりたいのはやまやまだが芳村の本意が分からない。
でも興味があるということかな。
悩む公彦の様子を見てリュウは公彦の胸の内を言い当てる。

異性でも同性でもそれぞれ好みがあるということさ。女性は求めてはいない。
身も心も女性になりきった男とも違う。一見しただけだと性別の判断がつかない男が好みだということだな。
矛盾してないかって、そもそも僕たちははじめから矛盾しているのさ。
矛盾した者同士だからお互いの気持ちが分かって惹かれ合って仲良くできるのさ。
リュウの理屈が公彦の腑に音を立てて落ちた。公彦が芳村の琴線に触れたことは確かさ。
黒田知永子か……
ちょっと似ているかも。ほんのり桜色に染まったリュウは公彦の顔を繁々と見詰め白い歯を見せた。


眉の手入れは自分でも驚くほど上手くいった。
職場では特別な決まりはないが、見苦しくない髪型にするようにと規定されている。
長髪はもちろん染めている者は誰もいない。
問題のヘアスタイルはウィッグを被ることで解決した。
リュウのアドバイスに従い痛い出費だったが値の張るものを注文した。

毎晩、部屋に積まれたファッション雑誌の山を崩しては、白の開襟シャツに細身の黒のパンツを合わることを決め、
自分なりの黒田知永子のスタイルを作り上げた。
すべての物が揃った夜更け、鏡に映る自分の姿に公彦から笑みがこぼれた。
変身願望があった訳ではなかったが、別人になりきったもう一人の自分を容易く受け入れていた。
自然と立ち振る舞いが女性のように柔らかくなってしまうことが不思議だった。

芳村に連絡を取ると公彦はさらなる要求を突き付けられた。
それは芳村のフェチズムを押し付けるものだったが、芳村もその気になり、再会の目的が
公彦の望む方向に向かったことを理解した。
チコのような大人の女性が身に着ける下着で来い。公彦は素直に芳村の矛盾を受け入れた。

期待と不安が交錯した日々を送り日増しに膨らむ欲望を抱え、公彦は待ち合わせの伊勢丹の玄関に立つ。
前を通り過ぎる人たちの視線が気になり落ち着かない。

時間通りに現れた芳村は公彦を見るなり満足げな表情を見せ、公彦は胸を撫で下ろした。
迷惑を掛けたと慰労するように芳村は上階のイタリアンレストランへ公彦を誘う。
密かな逢瀬のはじまりに胸の高まりを隠せない公彦を、敢えて混雑したレストランに連れ込んだ芳村の思惑。

生まれ変わったようだとはにかむ公彦に向けた容赦のない芳村の加虐の性。
突き付けられた理不尽な要求に公彦は凍り付いた。
公彦に露出趣味がないことは芳村には分かっていた。
イエスかノーか。有無を言わさず無表情で迫る芳村は別れた男の影を霧散させた。

羞恥に指の震えが止まらない。
耳まで赤くした公彦はナプキンをテーブルに置き腰を浮かせ、パンツのジッパーが音を立てないように下ろした。
隣のテーブルで耳をそばだてていた有閑マダムに電話番号のメモを渡されたのは、
今では愉快な思い出になっている。


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