夜のお伽噺

アルのオリジナル小説置き場です

チコ 10


加虐の淫に引導されし者だけが知る愉悦。たとえ臨終の床に就いても、罪深き煩悩が脳裏からは悔い去ることはなく、涅槃への道は険しく遠い。ならば、毒を食らわば皿までと、さもしい性が追い立てる。
老いた体力、気力から絵筆を遠ざけ、隠居に身を落とした老絵師の前に現れた美青年。
蜂を誘う薔薇のような美しさ、蜂を拒まぬ優しさに、老蜂の錆びた毒針が頭をもたげ、創作意欲を掻き立てた。


「逃げでもよろしいのに・・」

くすんだ薔薇色に染まった日暮れのアトリエは、息苦しいまでの湿った空気に満ちていた。
老絵師は、恐怖心で震えて寄せたチコの双の膝を、力ずくで左右に開き股間の前に跪き、割れた裾から突き出たチコの性器を見据えた。
「こんなにさせてしもうて、悪い爺やね。かんにんしてな」
「おう熱つう、火傷しそうや」
「――画伯、い、いけません」
老絵師の骨ばった指が、意地悪そうに撫で上げ、芳村との貞操を保つチコの性器を弄ぶ。
「芳村はん、知永君を今日だけしか爺に預けてくれんのや・・」
「芳村、『先生なら一度で十分でしょ』言いよった。爺な、ぐうの音もでんかった・・」
「そやさかい、爺、一生懸命描いたで。一発勝負や」
「でもな、芳村、よう知とる。知永君のハートが慣れてしまうことを・・ほんまにその通りや。あんないい顔、二度とでけんさかい」


老絵師は紙縒を舐めながら、若鮎のように手の中で跳ねるチコの性器を握った。本意に反して包皮を反転させ露出させた先端を指の腹でなぞられ、唇を噛み締め、遣る瀬無い疼きに耐えるチコ。溢れた淫水が淫靡な粘りを引き、発情した美青年の囈言が、加虐の炎に油を注いでいく。
「こないお漏らしさせてもうて、ほんまに悪い爺や」
血走る眼を寄せ、鰓の括れに環をかけ締め付け、息苦しいと泡を噴く口元にふっと息を吹きかけ、二本の指で丁寧に開いた。針の穴に糸を通すごとくに紙縒りの尖った先端を、淫水を溜めた紅色の粘膜の奥に慎重に差した。

「うあっ、嫌!」

経験したことのない激痛に震え上がる悲鳴が顔から噴き出し、身体を大きく反らせたチコは床に音を立てて倒れこんだ。
「知永君、芳村はんに、してもろたことあるやろ?」
「なになに、初めてかいな?」
「うれしいのう、お初つかい・・」
「爺のこと忘れんように、この身体が忘れんようにな・・」
「ほら、もうすこし、もうすこしや。我慢せんとあかんで」
チコの尻をぴしゃりと叩き、容赦ない術が紙縒りをねじ込んでいく。芳村とチコの主従関係に嫉妬する、老いて朽ちた男の情念が、二人の間に楔を打ち込む。漏れ出た小水の雫に歯軋りする芳村を想い描き、老絵師の頬が弛んだ。


冷たい紫檀の床はだに身を投げ出し苦悶するチコのたおやかな肢体。いたいけなその姿に見惚れた老絵師は、低い唸り声を上げるや、慌てて傍らの写生帳を広げた。
髪を乱し、瞳を濡らし、羞恥を染めた顔を歪めては不自由な身体をくねらせ、痛苦に悶えるチコを描き写していく。尖がった乳首、床を擦り小鉤が外れた白い足袋、尻臀の丸い輪郭、そして濡れた淡い陰毛にうずくまる、折檻の紐を垂らした性器。
加虐の形相が抜け、絵師の本懐が魂に宿り、迷いのない描線を引いていく。

麻紙の上に本能を満足させた老絵師は膝を付き、力を無くしたチコの片膝を胸まで折り曲げ、晒した恥部に恨めしまでの溜息を吐きかけた。
「芳村はんが夢中になるわけや・・」
閉じた恥部を妬んだ爪先が引っ掻き、濡れた紙縒りを垂らした陰茎に、獲物を抱える蜘蛛のような指を絡め、甘く悩ましい褒美を加えた。

「よう我慢した、ご褒美でっせ」
同じ色、同じ器官を持った者が与える愉悦の褒美に、チコの性器は血流をみなぎらせる。男の弱点を知り尽くした、老絵師の細い小指が息づく恥部の敏感なとば口を嘗め回し、たよりのない指が埋め込まれた。チコは不自由な身体を緊張させたが、切ない性感の微動に喘ぎ悶える。
「可愛いのう、ほんまに可愛いええ顔や・・」
「爺もあと十若かったら、芳村はんと喧嘩しても知永君を奪ったのに・・」

「泣き言わんで、よう我慢した、ええ子や」
迫り狂う快感にチコは股間を波打たせ、老絵師の指に力が篭る。
「さあ、気をおやり、だめな爺を歓ばせておくれ」
老絵師は子供をあやすような口調で言いながら、指間の隙間で責め続ける紙縒りを引き抜き、チコに絶頂を極めさせた。絞り出すように呻いた瞬間、身体の内側から膨れ上がった快感が堰を切り、飛沫を上げた白濁が床に飛び散った。恐ろしいまでの絶頂に激しく痙攣するチコの身体を老絵師はきつく抱き締めた。
「ほんまにええ子や・・帰しとうない・・帰しとうないのう・・」
老絵師の呟きが、チコの遠のく意識の中で木霊していた。



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チコ 9



神が決めた性別までも曖昧にした、妖しいまで魔力がその子の全身から満ちていた。
綺麗に染めた栗毛色の柔らかな髪が額にかかり、顔色は絹布のように白く、赤い唇は磨いた果実のようだった。

日本画の老絵師の喜寿の祝いの会で見初められ、渋る芳村を老獪な取引で口説き落とした。芳村との絶対服従の誓いに拒むことは許されず、老絵師の求めに応じてチコは鎌倉のアトリエに出向いた。
邸宅の玄関に立つチコの姿を見るなり、破顔させた老絵師の好々爺の態に、チコは戸惑いながらも、締め切った和室で老絵師に言われるまま全裸になり、和服に着替えさせられた。
姿見に映るチコの姿に目を細め、「待ちきれんかったよ」と、長い廊下をチコの手をいそいそと引き、邸内の奥に閉ざされたアトリエに招き入れた。


竹林の裏庭に面したアトリエの紫檀の床に跪く、チコの背中から忍ぶように寄り添い、細い肩にそっと両手を置くと、チコは息を詰らせ身体を硬くさせた。
「――ええね」と有無を言わせぬ老絵師の念押しに無言で頷いたチコは、背中で組まされた細い手首を朱色の帯締めで締め上げられ、身体の自由を奪われた。
急遽、チコの為に誂えた、蓬色の単衣の袖を無理やり引っ張り、大きく開いた襟から肌蹴た、なで肩の華奢な身体は薄っすらと艶づき、幼女のような乳首を老絵師に晒した。割った裾を端折り、貝の口にきつく結んだ柿渋の帯に挟み込んだ。
足袋より白い、弛みのない腿と脹脛、端折った裾から見え隠れする少年のような小さな尻臀。緊縛の歓びを知るチコの艶やかな唇からは、早くも熱を帯びた吐息が洩れていた。顎を少し突き出し、腰を左に捩り、肌蹴た胸を見せつけ、背中を少し反らせた姿勢をとらせた老絵師は、チコに向い立膝を付き、麻紙に身をかがめた。


竹林を揺らす、海鳴りとも山鳴りとも聞える低い唸りがめぐるなか、射るような老絵師の視線が往復し、渾身の鉛の描線が立てる音が、隠しようのないチコの興奮を露にさせる。
チコの身体の変化を知ってか知らぬか、気迫こもる老絵師の鋭い眼光にチコは息を殺し耐え続けた。
まるで視姦されているような、老絵師との妖しい関係に羞恥と侮蔑を煽られ、興奮した性器が下腹に触れる。耐え切れなくて洩らした溜息に、老絵師の手が一瞬止まったが、薄い唇の端を吊り上げて意地悪そうに笑うだけだった。

欲望に全身が火照り、痺れた膝が震えはじめ、チコの身体が揺れだした。老絵師はゆっくり大きな息を吐き、静かに筆を置くと、疲労した腕を擦りながら満足したように笑みを浮かべた。
「知永君、終わりましたよ」
「よう、辛抱してくださった。ご褒美せな、あきませんね」
老絵師は文机の引出から短冊に切った和紙を取り出し、器用に一本の紙縒りを作り、重そうに身体を起こした。
紙縒りを咥えた老絵師は、尻餅をついたチコに微笑ながらにじり寄り、異常な加虐の炎をくゆらせる老絵師の濁った瞳に恐怖心に駆られたチコは、思わず後退りした。


つづく。



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アル式デトックス 4thプログラム


「女の子になりたい」と子供じみた願いは、初めて同性との性行為を経験し、男に組み敷かれるたびに膨らんでいっていた。男は十七歳のありのままの男子学生の姿を僕に望んでいた。僕は男に馬鹿にされることを怖れ、膨らむ願望を口には出せなかった。男の求める荒っぽい行為で、自分の気持ちを偽っていたが、長く続くことはなかった。

不思議な偶然の重なりが僕と須藤さんを引き合わせた。休日の新宿で、同じ服屋を覗き、同じ本屋で立ち読みし、同じマックでバーガーを食べ、新宿裏の地下にある、同じ性癖が集まる男子専科の下着屋の薄暗い狭い通路ですれ違っても、気にも留めなかったが、さすがに帰りの電車の同じホームに立っていた青年の姿を見つけたときは驚いた。
青年も驚いたように目を丸くし、後退りした僕は、照れ臭そうな笑みを浮かべる青年に声を掛けられた。
清潔感漂う青年の整った目鼻立ちに見惚れ、僕と同じ色を隠し持つ瞳の中に、意識が吸い込まれていくような錯覚を感じた。デートと言うには程遠かったが、遭うたびに青年須藤さんの落ち着いた大人の雰囲気に憧れ、部屋に誘われた僕は黙って頷いていた。


行為の済んだ後も、僕を抱いてくれたのは須藤さんが初めてだった。
須藤さんの腕の中で僕の気持ちは女の子だった。僕はいつも女の子になりたいと願いながら、須藤さんの腕の中にいた。
須藤さんは僕と付き合い始めた時から、それが分かっていたのだと思う。身体の繋がりを求めようとしない須藤さんの本心が知りたくて、自分から求めたあの日、いつもと違う女の子を抱くような、優しさに満ちた抱擁に戸惑う僕の心中を察した須藤さんは、穏やかな眼差しを向け、隠していた僕の願望を言い当てた。
恥ずかしさと嫌われた悲しみを悟られたくなくて、思わず須藤さんの腕を退けた僕は、胸が押し潰されそうに、ぎゅっと抱き締められた。
頭を撫でられ、須藤さんの言葉に唇が震え、溢れる涙が止まらなかった。男の人の前で涙を見せたのは初めてだった。女々しい僕を軽蔑することなく、理解してくれる男の人と巡り合ったことに心が震えた。そして須藤さんは、僕の心の闇の中に手を差し伸べてくれた。



鈍い紅色に実った乳首は吸われるほど、硬さを増していく。じんじんと胸の痺れが、脊髄を下り陰核の芯を震わせ、滴る涎が腿に垂れる。
膝が胸につくほど折り曲げられ、僕の女の子の蕾が露わにされた。
「いや、見ないで・・」
指で開いて奥を覗く須藤さんの熱い視線に顔を背ける。蕾をなぞる指が、男の脳を、夢見る女の脳に変えていく。濡れた唇の接吻で唾液送り込まれ、興奮した須藤さんの溜息に息づく僕の女の蕾。

僕の身体を気遣かってゼリーを垂らした長い指が、ぬるっと、抵抗をなくした蕾に差し込まれる。出たり入ったりするたびに、くちゅくちゅと卑猥な音をさせ蕾が弛んでいく。自分でも説明できないほど、頭の中で湧き出した女の性が、蕩けた溜息を鼻から洩らす。
揃えた二本の指が中で開き、溶けたゼリーの一筋が背中まで垂れる。もう女の歓びを知っている僕の身体は、待ちきれないと須藤さんを求めている。
「もう・・おねがい・・」

期待に上気した身体を抱え上げられ、須藤さんの先端が当てられ、蕾が一瞬、緊張する。僕はしっとりと濡れた夜をのみ込むほど息を吸い、そしてゆっくり吐いた。
蕾は自分でも分かるほど弛んでいるはずなのに、押し開くように入ってきた須藤さんの陰茎は、何時にもまして大きな塊のようだった。身体を貫く重い重量感に僕は顎を上げ、女の子ように喘ぎ乱れ、シーツを握り締めた。
「痛いかい・・」
僕は唇を噛み締め首を激しく横に振る。須藤さんが教えてくれた、肉体的な女の感覚に慣れた淫らな僕の身体。須藤さんの手に指を絡めて強く握る。握り返してくれる手の温もりに、目尻に溜まった涙が頬に伝わる。興奮に粟立つ肌を、宥めるようにゆっくりと撫でてもらい、淫らな幸福感が僕を包む。
須藤さんは、眉を顰めて僕を感じている。もっと感じて、もっと、もっと・・

抉るような突き上げに上ずる身体を引きずり寄せられ、窒息しそうなぐらいに蕾の淵まで一杯に塞がれ、切羽詰まった声を吐いた。
「いや、いや・・そんなにしちゃ、いや・・もう・・」
爛れたように蕩けた粘膜が擦れるたびに、本当に自分が、女になったことを感じる。限りなく高みに昇っていくような感覚の中で、それを感じている。

真っ白に沸騰した頭の中で、やめないでと願いながら、僕は虚しい言葉を放ち、小さな嫉妬にも耐えられないぐらい、僕は切実に須藤さんを求めている。
「須藤さん!」
「あの人より、あの人より、僕のが・・僕のほうが・・って」
「あっ・・ふっ、はぁっ・・はぁ・・須藤さん!」
「いっちゃう!」
女になった甘美な陶酔のうねりに、焦点の合わない目で須藤さんに夢中でしがみ付き、須藤さんを身体の一番奥深くまで吸い込み、ぎゅっと締め付けた。女の肉体が感じる深い絶頂を下腹から胸にまで飛び散らし、溢れてくる幸福な絶叫を口の中に留めることができず、激しい声を上げた。
軋む蕾に須藤さんは腰を打ちつける。強く乳首がつまみあげられ、泣き声を上げ半狂乱した僕は髪を振り乱し、蠕動する女の肉体で須藤さんの上反る陰茎の根本を何度も締め上げる、すぐに須藤さんの射精の衝動を感じ取り、喘いだ須藤さんの身体は僕の上に崩れ落ちた。


微笑む須藤さんの手が伸び、汗で額に張り付いた前髪を分けて潤んだ瞳を覗かれた。
「ありがとう・・大丈夫かい?」
本当は少し苦しさもあったけど、それでも須藤さんを全部を受け止めた女の歓びに、首を何度も横に振った。放心した身体を抱かれ、須藤さんの胸の中で微睡む僕は、好きな詞を思い浮かべた。

もし一枚の絵が千の言葉を描くなら
僕は貴方を描けないだろう
言葉では言い表せない
心に浮かぶ貴方のことは・・・


突然、思い出し笑いした僕は、須藤さんに下村真弓に誘われたことを告げた。
「須藤さんが席を外したとき、下村さんに誘われました。須藤さんの親戚を騙っていたから、その場では断る理由が浮かばなくて・・」
「彼女、学生の時から発展家だったから・・」
「下村さんて、グラマーですね」
須藤さんの過去のことに拗ねていた僕は、気のある素振りをして、須藤さんの本心を探った。
下村真弓の豊満な胸を思い浮かべた僕を見透かした須藤さんは、僕を強く抱き揺すり、嫉妬したように乱暴に唇を奪い、今夜僕が望んでいた言葉を口にしてくれた。

「ヨシ君、私の一番大切な子だ。好きだ」
「須藤さん、好きです、大好き!」
発情した僕の身体に、須藤さんの熱い唇が落ち、僕の手の中で須藤さん想いが膨らんでいった。

夜はまだ、二人だけのもの・・・




アル式デトックス4thプログラム、お役に立てたでしょうか?

すっきりとした朝を迎えられたことと思っております。







おかげ様で記念すべき100本目のお話を書き上げることが出来ました。
今回のお話が、それにふさわしいかどうかは、親愛なる読者の皆様のご判断に委ねるとして、
拙いブログに、5万を超えるアクセスをいただけたことに、深く感謝いたします。

1万アクセスの壁を乗り越える険しく長い道のり。その後に立ちはだかる、さらに高い壁。
何度ブログの更新を放り出したことでしょう。その度に読者の皆様のアクセスと貴重な拍手に励まされ、萎えた気持ちを奮い立たせ、どうにかこうにか今日まで続けることが出来ました。

本当にありがとうございました。



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アル式デトックス 3rdプログラム


終わらぬ暑さに、夏の疲れが取れない親愛なる読者の皆様に朗報です。ご好評?頂きましたアル式デトックス、皆様の熱いご声援を受け、性懲りもなく今夜3rdプログラムの公開と相成りました。
私事で恐縮ですが、柄にもない絡みのないお話が続き、体内の不純物が飽和状態になり、夜も眠れません。
それではと、溜まった不純物を取り除くためにアル式デトックスの再開を決定いたしました。
「なんだ、ヤルだけの話か・・」
まあねぇ・・確かにヤルだけのお話ですが、お付き合いいただければ、読者の皆様に、すがすがしい朝が迎えられることをお約束いたします。




「M大学に通っています」
「洋一兄さんの遠縁にあたります」
その日、高校生の僕は須藤さんの親戚になりすまし大学生を演じた。

二人だけで出掛けた初めてのコンサートだった。その晩は須藤さんの家に泊ることを決め、早くから母には嘘の言い訳を準備していた。それを聞いた須藤さんは困ったような素振りをしながらも嬉しそうだった。
コンサートが引け込み合うロビーで、須藤さんの大学時代の友人たちに偶然出くわした。友人たちに僕を紹介する言葉に詰る須藤さんに、咄嗟に付いた出鱈目だったが、須藤さんは呆れた顔をしながらも、僕の肩にそっと手を置き、嘘を許してくれた。
コンサートの余韻としばらくぶりの再会で別れを惜しむ友人たちに食事に誘われ、予定外の成り行きに、断る方便が浮かばない須藤さんと遠慮した僕までも、無理やりタクシーに乗せられ、四谷の中華料理店へ向った。

誰もが学生時代に戻ったように瞳を輝かせテーブルを囲み、冗談とも本気ともつかない弾む会話で杯を重ね、笑いが途絶えることはなかった。仲間内の会話を黙って聞いている僕に、隣に座った大学病院の薬局に勤める下村真弓さんの大人の女性の気遣いに、独り浮くことはなかったが、大きく胸の開いたTシャツからこぼれる彼女の胸の膨らみに、憧れと妬みに目を泳がせていた。

「そう言えば須藤、坂本さんは?」
「・・・」
「―――あれから、一度だけ・・」
須藤さんはその話には触れて欲しくないとばかりに、友人に酒を勧めた。
「須藤君、加奈と会ってないの?」下村さんは驚いたように聞き返した。
「卒業したら、なんだか疎遠になって・・」
「私、付き合っているとばかり思っていた。羨むほどだったのに」
もう一人の女性が口を挟んだ。苦笑いする須藤さんに僕の胸は騒いだ。


僕の知らない須藤さんの過去。もちろん僕と知り合う前のこととは分かっているものの、加奈という女性の影が僕の中で色を濃くし、脳裏に浮かぶ睦ましい二人の姿に落ち着きをなくした僕はショルダーバッグからタバコを引き抜き、須藤さんに見せ付けるように、派手に煙を吐いた。
慣れた手つきでタバコを咥える僕に驚いた須藤さんの顔。
須藤さん、僕は不良です。あなたの思っているようないい子ではありません。

難しい名の中華料理とはじめて舐めた中国の強いお酒に酔い、子供染みた嫉妬にふて腐れ、帰りのタクシーの中で終始無言を通した僕は、深夜の須藤さんの暗い部屋にはいるや否や、狂ったように須藤さんに抱き付いた。すぐに腫れぼったくなった股間を須藤さんの股間に擦り付けていた。

「―――加奈さんて、綺麗な人なんでしょ?」嫉妬に口を尖らせた。
「僕なんか・・」
「ああっ須藤さん」
須藤さんはジーンズの上から僕の股間を強く握った。
「嫌です!」
拗ねて引いた腰を抱え込まれ、須藤さんの慈愛に満ちた柔らかな唇を火照る頬に受けても、自分の貧弱な身体と換えようのない性を、妄想した加奈の身体と比べ、言いようのない憂いに沈んでいた。
「だって・・」
「僕は・・胸もぺちゃんこ・・」
「それに僕は、僕は・・」
須藤さんに無理やり口を塞がれ、後の言葉を須藤さんの唇に掠め取られた。
「駄目です。駄目!」
汗で張り付いたジーンズとブリーフを乱暴に引き下ろされ、僕の陰核は触れられてもいないのに、須藤さんに見られたことで、みるみる突起し、須藤さんの言い付けを守り、禁欲に耐えた抑えようのない欲求不満を露にさせた。
「意地悪しないで・・」
嫉妬心がもたらした昂る感情で、羞恥心をなくした僕は須藤さんの手を下半身に誘い、頭の芯まで痺れる深い口付けに加奈の妄想を頭から蹴散らした。



初めて二人だけ過ごすの夜のために須藤さんが用意してくれた、レースの夜衣を火照る身体に羽織り、性器だけを包み隠す紐のような下着に陰核を納め、僕はベッドに呼ばれた。シャワーで濡れた髪を須藤さんからプレゼントされた髪留めで纏めてもらい、鏡に映る僕は女の子のようで、もうそれだけで期待に胸が弾けそうだった。
「―――須藤さん・・」
「可愛い、おいで」
蠱惑的な下着姿で含羞む僕に目を細める須藤さんの胸に飛び込んでいった。柔らかな抱擁と口付けに性別を超えた愛おしさがこみ上げ、二人で愛のありかを探した。須藤さんの手の平が、僕の小さな下着の膨らみを被い包み、僕は須藤さんの腰に巻かれたバスタオルをほどき、熱く重い陰茎に指を這わす。
大人の昂りに視線を落とし、溜めた唾液で乾くことのない唇で、須藤さんに忍び寄る、加奈という亡霊を振り払うように、須藤さんの大きな陰茎を頬張った。同じ器官を持つ者が知る愉悦の源を舌先で刺激し、須藤さんの溢れる甘い発情が舌を蕩かせ、僕の頭を優しく撫でては、快感を口から洩らす須藤さんに、ささくれた心が癒される。

荒い息でベッドに身体を投げ出し、僕は夜衣を捲り上げ、艶付いた胸を須藤さんに見せ付け唇を誘う。肌に落とされる濡れた口付けに悶え、股間を突き出し、待ちきれない欲情を晒す。
尖らせ濡らした窮屈な下着から陰核を摘み出され、剥き出しになった敏感なところに細い指先が、すうっと環を描く。ぶるっと腰が震える。須藤さんに歓んで欲しくて、密かに手入れした陰毛まで濡らし、泡立つ音が恥ずかしい。
「ふぅん・・だめです・・」
「ごめんよ・・こんなにさせて・・」

悩ましく切ない慰めに翻弄される心と身体を、須藤さんの肩を両手で掴んで耐えた。




アル式デトックス3rdプログラムいかがでしたでしょうか。
クダラナイ、中途半端だと思ってはいけません。
例年になく異常な暑さで、簡単に弱った体力が回復することはできません。

「続けろ」「読んでやる」という奇特な読者の皆様がいらっしゃることを切に願っております。



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