夜のお伽噺

アルのオリジナル小説置き場です

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ご愛読に感謝

同じ部活の薫と仲良くなって、はじめての外泊。

玉砂利を踏む初詣の人波に押され、並んだ身体がぶつかり、

薫の手をそっと握った。

薫は一瞬驚いた顔をしたけど、僕の手を握り返し微笑んだ。

はじめて知った薫の温もり、薫への想いがまたひとつ膨らんだ。


小さく打った柏手に込めた小さな願い。

「薫は何をお願いしたの?」

「コウちゃんと同じことかもしれない」

僕の笑顔に含羞む薫は、満面の笑みを向けた。

「薫、温かいものでも飲もう」

「うん」

両手をポケットに突っ込んだ僕の腕に

薫は嬉しそうに腕を組んだ。




一年間のお付き合い、誠にありがとうございます。
ちっとも上手くならない文章、相も変らぬ話の展開、改めて知った文才の無さに、スランプに陥ることしばしば。よそ様の秀逸な小説ブログを拝読し、無謀にもブログを始めたことを今更ながら後悔しております。
それでも、こんな拙いブログにご訪問いただき、さらには沢山の拍手、身に余るコメントまでいただき、萎える創作意欲をどうにか奮い立たせております。親愛なる読者の皆様には、感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございます。

「チコ」も「ルル」も最期は投げ出したような結末で、反省しております。チコ、ルルは私には思い入れのあるキャラクターで、正直、可愛くてしょうがない(笑)愛すべき存在なのですが、それ故に、思いつく話の展開が納得出来なくて、二人の出番が全くありません。しばらくぶりに書いた「チコ7」は、一話完結の「チコ」のエピソードなのですが、敢えて「7」として、本題に続くための序章のような体裁をとり、自分を追い詰めております(笑)しかし、まあ、続きが何時になるのか・・

例年になく厳しい寒さが続いております。読者の皆様には体調を崩すことなく、素敵な年末年始をお過ごしください。


スポンサーサイト

チコ 7


当ブログに、初めてご訪問していただいた読者の方は、お手数で申し訳ありませんが、カテゴリ(チコ)からお付き合いくだされば、嬉しい限りです。


お日柄が良かったのか、ホテルのロビーは正装した人々で賑わっていた。正面に飾られた豪華なアレンジメントの前で記念撮影をする、着飾った若い女性たち。彼女たちを囲み、談笑する派手なネクタイをしたスーツ姿の男たち。引き出物が入った大きな紙袋を下げた披露宴を終えた出席者と、これから披露宴に向かう人々が行き交う中をすり抜け、エレベーターホールに向う僕を呼び止める声に驚き、足が止まった。
「杉崎君?」
振り向いた視線の先には、見覚えのある女性が笑顔を向けていた。
「あっ、紙谷さん」
以前勤めていた職場の先輩だった紙谷優子とは、退職してから初めての再会だった。披露宴に呼ばれたのだろう、淡いパープルのカクテルドレスで着飾り、色香さえ漂わせる大人の女性の雰囲気を醸していた。
「しばらくぶりね、杉崎君が辞めてから一年以上なるかしら。元気してた?」
「ええ、どうにか。今日は結婚式ですか?」
「うん、大学の友人の結婚式に呼ばれて。これから二次会で、新郎新婦を待っているところ」
「杉崎君は?」
「仕事中でね・・」
「あっ、ごめんなさい、引き止めて」
「いや、構いません。急いでいるわけでもないから」
ビジネススーツとは程遠い、見るからに仕立ての良いスリムなスーツ姿、耳まで覆う栗毛色に染めた髪が、普通の勤め人とは違うことは、紙谷にはすぐに判った。透けるような素肌、細く整えた眉毛、目の前にいる杉崎には団体職員だったあの頃の面影は全く無かった。自分の周りにはいない雰囲気に、退職後の杉崎に興味を覚えた紙谷は、しばらくぶりの再会の懐かしさと披露宴の華やかで高揚した神経がそうさせたのか、杉崎を引きとめ、ロビー脇のティーラウンジに半ば無理やり誘った。

披露宴の出席者で満席のティーラウンジだったが、入り口に立つ杉崎に駆け寄り、丁寧に会釈したウェイターは二人を断ることなく、奥の予約席の札が置かれた席に案内した。ウェイターの杉崎への厚遇に紙谷は驚き、杉崎に益々興味が惹かれていった。
「杉崎君はよくここに来るの?」柑橘系のコロンが微かに香る杉崎に顔を寄せた紙谷は小声で言った。
「まあ、よくって程でもないけれど、ボスの仕事場が上のホテルの部屋にある関係でね」
「そうなんだ、今はそこに勤めているのね。どんな仕事してるの?」
「ボスの秘書みたいな、ほとんど運転手だけれど・・」
自分のしていることが、仕事と言えるだろうか、杉崎本人にさえ判らなかった。初めは自分の隠していた性癖を満足させるためか、それとも平凡な日常生活に刺激を求めていたのか、ある男から芳村を紹介されたのが、きっかけだった。芳村との関係は想像を超えるもので、見るもの聞くものすべてが自分の愚かな考えを文字通り破壊したが、刺激に満ちた成り合いに芽生えた密かな愛情が、芳村への服従を誓った。
「なんだか杉崎君、ずいぶん雰囲気が変わった」
「えっ、そうかなぁ・・」
「うん、変わった。なんて言うか、妖しい感じがする。私、ドキッとした」
「そんなことないって、紙谷さん少し酔ってるでしょ?」
紙谷さん、スーツの下の僕の身体を想像してごらん。芳村に言われた通りに身体の手入れを施し、そう陰毛までも揃えて、欲情を煽る艶やかな下着に脚を通しているよ。芳村の悦び、芳村はそれを絶対に顔に出すことはしない。僕は芳村の興奮の前に跪く。緊縛を望む僕を蔑視する芳村、それでも硬い結び目が汗ばむ僕の肌に食い込む。身体を貫く楔、苦痛の中で生まれる屈辱的な快感、男の悩ましい呻き声を聞いたことがある?男の激しい絶頂を見たことある?紙谷さん。
「私、少し酔ったのかな・・」
「紙谷さん、おめでたいお酒に酔ったんですよ。男の僕に妖しいなんて可笑しいですよ」
杉崎の満面な笑みに、紙谷は胸の中で芽生えた杉崎への好意のような小さな想いを否定しなかった。

テーブルに置いた紙谷の携帯が振るえ、仲間の呼び出しに紙谷は名残惜しそうに腰を上げた。
「もう行かなくっちゃ、杉崎君、一度食事に誘ってよ」
「いいですよ。僕でよければ、紙谷さんのような素敵な女性に誘われて光栄です」
杉崎の言葉に一瞬笑顔をほこぼらせた紙谷は、急いでナプキンに携帯番号を書き、杉崎のティーカップの横に滑らせた。
「元気そうでよかった。またね」
「紙谷さんこそお元気で、また会いましょう」
紙谷の後姿を見送った杉崎は、少し思案した後、紙谷が置いていったナプキンを二つ折りにしてポケットに仕舞い、ティーラウンジの伝票に芳村の部屋番号と黒田とサインしウェイターに手渡し、芳村に電話した。
「チコです、遅れて申し訳ありません。今から部屋にお邪魔します」
賑やかなロビーには、もう紙谷の姿はなかった。チコは胸元で揺れる、クロスのペンダントをシャツの上からそっと握り、燻りだした欲情を静め、エレベーターのボタンを押した。



突然の古いお話の続きに、面食らう親愛なる読者の皆様にお詫びいたします。

年の瀬のご多忙の中、相も変らぬ拙文へのお付き合いに感謝いたします。


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL短編小説へ
にほんブログ村

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。