夜のお伽噺

アルのオリジナル小説置き場です

チコ 1

アルのアーカイブより。手垢の付いた古いお話ですが、加筆、編集いたしました。
相変わらずの酷い文章ですが、お付き合い、いただければ嬉しい限りです。R20



新宿の雑踏の中、その子は不安そうな顔付きで約束のデパートのウインドの隅に立っていた。小柄で華奢な体型。私は道路の向かい側からしばらくその子の様子を見ていた。
飲食店を何軒か経営し、私のような者に、同じ嗜好の子との仲を取り持つ相原から、以前に紹介された子は、なかなか現れない待ち人に、通行人の好奇な視線を気にすることもなく、ポケットからコンパクトを取り出し化粧を直しはじめた。私は、その羞恥心の無い行動に嫌気が差し、声も掛けず立ち去った。
すぐに、相原から怒りの連絡があったが、「気に入らない」と一言告げ、電話を切った。

どうしたものか、半年も音信不通だった相原から先週末連絡があり、私は長い付き合いの、相原の強っての頼みを断りきれず、仕方なく新宿に出掛けた。信号が青に変わり、私はその子の前に立った。
「君が相原の・・」
その子の顔に緊張が走った。
「待たせたかな?」
「いいえ、今、来たばかりです」
可愛いい嘘に、私はその子を路地裏の喫茶店に誘った。テーブルを挟み向かい合い、無言で俯くその子に私は口を開いた。
「こうゆう事は初めてか?」
頭を小さく縦に振った。
「顔を上げろ」
驚いたように眼を見開き、その子は姿勢を正した。少年のような顔立ちと少女のような素肌。相原は、やっと私の好みを理解したようだった。
「人の話は顔を上げて聞け」
「はい」
「学生か?」
「いえ、違います。僕は・・」
「お前の仕事に興味は無い」言葉を遮った。

「モデルのチコを知っているか?」
「・・・」
「知りません」
「ネットで調べろ」
「分かったらチコのような髪型にしろ。その眉毛も。それ以上のことは許さない」
「いいか?」
「わかりました」
「自分で納得出来たらメールしろ。嫌なら連絡は要らない。相原に伝えろ」
「私は薄汚いジーンズは嫌いだ。わかったな」
脅えきった表情のその子を睨みつけ、私は伝票を掴み席を立った。


(やっと納得が出来るようになりました)
あれからちょうど2ヵ月後、その子からメールが届いた。私はその子に、もう一つ宿題を与え、待ち合わせの日時を返信した。
前回の待ち合わせ場所と同じデパートの玄関に、その子は私の言いつけ通りに、髪型を斜めに分けたショートボブに変え、胸元を開けた仕立ての良い白いシャツに細い黒いパンツと、清楚な身なりで現れた。満足した私は、緊張して、昨日から何も食べていないと照れたその子を、上の階のイタリアンレストランに誘った。
昼下がりのレストランは買い物を終えた女性客で埋まり、私たちは一人で食事する派手な中年女の隣の席に腰を下ろした。女はその子に興味が惹かれたらしく、その子を横目で追うのを私は見逃さなかった。私はビールを頼み、その子は遠慮がちにマルゲリータを選び、アルコールは、すぐに顔が赤くなるからとアイスティーを頼んだ。

「いかがでしょうか?」
「気に入った」私は湧きあがる欲望を押さえ、素っ気無く応えた。眉毛を細く整えたその子の顔が華やいだ。
「チコのようになれといわれても・・」
「でもお前は理解した」
「髪は伸ばせなくて、ウィッグを買いました」
「散財させて悪かった」
「いえ、何だか生まれ変わったようで」
「嬉しいか」
「ええ」
その子の細く長い指。品良く食事するその子の仕草に、私の加虐趣味に火が点いた。

「セックスしたことあるか?」私は隣の女にも聞こえるように言った。
食事の手が止まった。その子も隣の女も。
「・・ありません」俯き呟いた。
「キスは?」恥ずかしそうに顔を横に振った。
「もう一つの宿題を見せてもらおうか」
「ここで!」驚きと羞恥に、みるみる顔を赤らめるその子。
「嫌か?」
「だって・・」
「嫌なら私は帰るが」私はゆっくりとのグラスに残ったビールを飲み干した。

何度も躊躇した挙句、その子は諦めたように、そっと椅子を後ろにずらし前屈みになり、ナプキンで股間を隠しながらベルトを緩め、パンツのファスナーを下ろす音が聞こえた。
「見せろ」
その子は周りを気にしながら、震える手でナプキンをテーブルの上に置き、パンツを左右に開き、シャツの裾をたくし上げ、股間を彩る黒いレースの下着を露にした。
唇をかみ締め顔を反らし、激しい羞恥心に肩を震わせるその子。
「チコが穿くような下着が良くわかったな」
「隣のご婦人も見たがっているぞ」
女は私を睨みつけた。
「駐車場で待っている」
私はその子をテーブルに残し席を立った。


慌てた様子で駐車場を走り回り、私のクルマを探すその子にパッシングで合図した。
ドアに縋り付いてきたその子に私は窓を少し下げた。
「運転できるか?」
「出来ますが・・」
「僕、左ハンドル運転したこと無いです」
「ぐずぐず言うな、乗れ」
私は運転席に腰を下ろしたその子の身体を乱暴に引き寄せた。
よほど恥ずかしかったのだろう、火照る頬を両手で押さえ、震えが止まらない唇を奪った。
荒い息が甘い息に変わり、私は唇を離した。
「恥ずかしくて、逃げてきました」
「あの女、何か言っただろ」
「電話番号のメモを渡されました」
「どうした」
「ウエートレスの女の子に渡してきました。デートしたいって」
私は声を上げて笑った。
「いい子だ」私はその子の肩を抱き締め、頭を撫で、涙ぐむその子をなだめた。
「お前は今日からチコだ」
「チコ、クルマを出せ」

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チコ 2

アルのアーカイブより。 ※チコ 1 の続きです。こちらからお読みいただけます。 R20


拝啓 清秋の候、皆様にはますます御清祥のこととお慶び申し上げます。
日頃は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。
このたび、かねてより計画中でございました店舗改装が整い、本月20日より開店の
運びとなりました。
これもひとえに皆々様の御支援の賜物と心から感謝いたしております。
なにとぞ一層の御愛顧を賜りますよう謹んでお願い申し上げます。
まずはとりあえず書中をもって御挨拶申し上げます。
                                   敬具
                       
                                    ラウンジ・ベラミ
                                        西野妙子
   芳村さん必ず来てね。必ずよ。

添え書きされた妙子から届いた案内状。不義理するわけにはいかず、私は遅い時間に妙子の店に出掛けた。


「芳村さん、よくいらっしゃいました」
満面の妙子の営業スマイル。艶やかな和服姿の出迎え、綺麗に揃えた襟足で男をくすぐる。
「素敵なお花ありがとうございます」
賑やかな店内に、顔を揃えた上客。案内された奥のリザーブ席に腰を下ろした。
「妙子、前と変わらないな」
「ずいぶんなご挨拶だこと」
妙子の人知れぬ頑張りを私は褒め、二人で乾杯した。

「芳村さん、今夜だけヘルプをお願いした娘、呼んでもいいかしら?」
「構わん」
妙子がボーイに呼ばせた女の子がテーブルの前に立った。
「チコ・・」
「ヘルプのチコちゃん」
「芳村さんにご挨拶したら」妙子は悪戯っぽく笑った。
「チコです」
髪を栗毛色に変え、薄化粧を施した見違えたチコの容姿。私の脇にそっと腰を下ろし、斜めに揃えた膝に手を重ねた。
「妙子、私が、おふざけが嫌いなのは・・」
「十分に承知しています」妙子は私の膝に手を置いて、にじり寄り耳元で囁いた。
「ですから、今夜はお帰りくださいませ」
「チコちゃんに送らせます」


「芳村さん」
一階まで見送りに出た妙子に腕を掴まれ引き止められた。
「チコちゃんは」
「壊さないで」何時になく真剣な妙子の眼差し。
「妙子、世話掛けた」

胸元をフリルで飾った黒いサテンのブラウスにバギーパンツを合わせたチコ。
「そのスタイルは自分で決めたのか?」
「ええ・・本当は妙子さんに揃えていただきました。お店の雰囲気を壊さないように、僕は気をつけただけです」
落ち着いた様子でステアリング握る、淡い色のマニュキアを塗ったチコの細い指。
「運転、慣れたな」
「しばらく妙子さんの運転手をしていました」
そうゆうことかと、合点した私はチコに命じた。
「チコ、飛ばせ」

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チコ 3

アルのアーカイブより。

折り入って話があると掛かってきた妙子からの電話、何時になく妙子の神妙な言い回しに、
いい話ではないことは察しがついたが、部屋を移ったこともあり、新しい部屋の番号を教えた。

「まあ、素敵なお部屋」
「同じ景色も見飽きた」
妙子はスカーフを緩め、夕暮れに染まる東京の街に足を止めた。
「妙子、ホテル住まいは楽だぞ。気を使うこともない、何でもある」
「芳村さん、浜田山のお宅は?」
「住み込みの夫婦に任せた」
「ソファーは気に入らなくて入れ替えさせた」
「好きなとこに掛けてくれ」
「お茶を運ばせる」

仕立ての良い派手過ぎないテーラーメイドのスーツを着こなし、誂えた上品なクロコのハンドバッグ。
客当りを考え、敢えてブランド物を避ける妙子の計算尽くの身だしなみが、上客に可愛がられる所以だろう。
「妙子、無い袖は振れんぞ」
「もう、芳村さんたら、おかげ様で」
「実は今日お邪魔したのは・・」
ティーカップをそっと置き、言い難そうに口を開いた。

「チコちゃんのこと」
「チコ?」
「ええ・・」
「芳村さんが承知してくださって、今もチコちゃんに私の用をお願いしているの」
「運転をお願いしたり、ちょっとしたお店のお使いを頼んだり」
「そんなことは構わんが」
「あの子を引っ張りまわした私が悪いのは重々承知しています」
「実は・・あの子仕事止めるから、店で使ってくれって」
「それもね、私に言うと断られるから、マネージャーの窪田に」
「窪田も困っちゃって」
「芳村さんのお許しをもらっているのって聞いたら、まだって言うし」
「話の順番が違うでしょって怒ったら」
「私からもお願いしてもらえないかって」

「チコからは何も聞いていない」最後は妙子の作り話は明らかだった。
「妙子、お前はどうなんだ」
「・・」
「お前の腹はどうなんだ」目を泳がせる妙子を睨みつけた。
妙子は、諦めたように小さな溜息を漏らし、ソファーの上で姿勢を正した。
「チコちゃんにお店を手伝ってもらえれば・・」
「あっ、もちろんお客様のお相手ではなくて、奥のことを」

「妙子、チコは可愛いぞ」妙子ににじり寄った。
「まあ、妙子のおかげで磨きがかかって、感謝してる」
「いえ、そんなこと・・」
「この間、相原から口惜しそうな電話をもらったよ」

「妙子、先週も奥のベッドで、虚ろな目で縛ってくれって」
「チコは縛られると・・身体がピンク色に染まってな」
妙子の瞳が潤みはじめ、ソファーに深く座りなおした私は、わざと妙子の性的興奮を煽った。
「飛び出した乳首を抓ると、辛いと呻いてな、みるみる下着を濡して、せがむ」
「してくれと・・」
「チコの小さな尻を指で無理やりひろげて」
「嫌だって」
「小娘のような声で悶えて」
「愛くるしい・・愛くるしいチコの裸に、年甲斐も無く我慢が出来なくて」
妙子は膝上のスカートの裾を直し、ナプキン代わりに掛けていたハンカチを握り締めた。

「眉間に皺を寄せて、唇を噛んで痛みに耐えて」
「小水まで垂らして」
「妙子、チコの小さなちんちんを扱いてやると」
「真っ赤な顔して痙攣して」
「泣きながら射精するんだ」
「何度も何度も」
「すごい量だ」
「妙子、チコは可愛いぞ」
「芳村さん・・」妙子は掠れた声で唇を舐めた。

「妙子、お前は分かっている」
「チコ目当てのお客がいるんだろ」
「妙子、私との仲だ、正直に話せ」
「ええ、芳村さんの言う通りで・・」
「チコちゃんはあの容姿で、気立てもいい子で」
「それに頭もいい子」神妙さを装い俯く妙子。

「妙子、お前も欲しいんだろ?」
「チコの身体が」
「顔に書いてある」顔を上げ、目を見開いた妙子の身体が固まった。

「なあ妙子、チコはまだガキだが、人を惹き付ける魅力がある」
「だがな、あいつには危険な匂いがする」
「妖しい魅力の先に」
「もちろん本人は気付ていないが」
「・・・」

「妙子」
「店を取るか」
「チコを取るか」
「苦しむことになるぞ」

続く。

チコ 4

アルのアーカイブより。

「住み込みに使えと言ったら、年寄りには無理だと断られた」
「ホテルの洗車員に乗らないと駄目だと脅かされてな」
「チコ、こんなクルマは嫌か」
「いえ・・」
「僕に運転できるか」
「心配するな」
「運転が下手糞な米国人のクルマだ」
「チコ、今夜は遠回りしろ」
私は先に低いシートに身体を潜らせた。小ぶりの尻に食い込むようなスリムなセンターブレスのパンツに黒のハイゲージニットを細い身体に合わせ、長いマフラーを緩く巻いて妙子のクロスのペンダントを隠していた。女だか男だか分からないようなスタイル。チコはいつの間にか私の好みを理解していた。
不慣れな運転に揺れたクルマも深夜の湾岸線の看板を越えた頃から落ち着き、チコは何気ない口調を装い、言い難い用件を切り出した。

「芳村さん」
「妙子さんのお手伝いが出来ないかと」
「手伝い?」
「はい」
「妙子の何を手伝う」
「妙子さんのお店の・・」
「妙子さんには言いづらくて」
「窪田さんにお願いしましたが・・相手にしてくれませんでした」

「チコ、妙子の店で何が出来る?」
「えっ?」
「もう一度聞く」
「お前は店で何が出来るんだ」
「・・・」
「自惚れるな!」
神経質なクルマが左右に揺れ、脅えたチコは小さなステアリングを握りなおした。

「窪田は言われなくても分かっているが」
「妙子はお前の素性を店の者に話したりはしない。だから店の者は、お前をどう扱っていいのか」
「耳障りのいいことを店の者に言われ」
「お前は、それを認められたと」
「勘違いしている」

「チコ」
「妙子は利口だ」
「お前に興味を持つ上客が何人かいることを知って」
「用を言いつけては、店に顔を出させる」
「今夜のような、暇な週明けを選んで」
「でも、世話になっている妙子さんに・・」
「寝てやれ」
「妙子はお前が欲しいと」
「・・・」
動揺を隠すように踏み込んだアクセルに、重心を下げたクルマは道路に張り付き、唸りを上げたエンジン音は、チコの心の叫びのように聞こえた。

真夜中の地下駐車場のエレベータホールのエントランスの前にクルマを止めさせ、有りもしない予定を気にしたように腕時計を一瞥した私は、明らかに憔悴するチコを残し、重いドアを開いた。
「クルマは、お前に任せておく」
「好きにしろ」
「わかりました・・」チコは諦めたように、私に顔を向けることもなく頷いた。
乗り込んだエレベーターのドアが閉まるやアイドリングの音が、野太い排気音に変わった。


ジャケットを脱ぎ、コップに注いだミネラルオォーターを置いたデスクの上で、携帯が小さな音で震え光った。私の携帯番号を知る数少ない者。
「・・・」
「・・チコです」
「お仕事のお邪魔でなければ、伺ってもいいですか」


続く。

チコ 5

アルのアーカイブより。

部屋に入ってきたチコは、私が命じた妙子のことで、動揺しているのは明らかだった。
デスクチェアーに座りなおし、腕組みした私の前で、おどおどした様子で俯いた。
「どうしたチコ」
「何か用か?」
「・・・」
「返事しろ」
チコの身体が一瞬すくみ、肩を震わせた。
「わかりません・・」
「わからない?」
「どうしたらいいのか」
「妙子さんとのこと・・」
「妙子?」
「はい・・」
「寝てやれと言ったはずだ」
「でも、でも」
「芳村さん」
「僕は・・」

自分なりに考えた、世話になった妙子への恩返しをあっさり否定され、さらには、私が命じた屈辱に苛立ちが隠せないチコ。私はチコを睨み付け、「行くも戻るも、お前次第」と無言で威圧し、返答を迫った。愚かな気持ちで踏み込んだ私との関係が、想像以上に重く、辛いことに戸惑う、チコの揺れる気持ちが手に取るように分かった。長い沈黙の末、自分の立場を受け入れたチコは、後悔とも諦めとも違う眼差しを私に向け、小さく頷いた。

私は、ゆっくりとミネラルウォーターを飲み干し、深い溜息を吐いた。「しょうがない奴だ」と、いかにも大袈裟に舌打ちし、立ち上がった私はチコの腕を掴み、バランスを失い身体を泳がせるチコを抱え、仄暗いベッドに押し倒した。シーツの上に崩れたチコの身体を跨ぎ、首に巻かれたマフラーを外した。
「縛られたいか?」
「縛ってください・・」自分の性癖を吐露する濡れた瞳を向け、潤んだ声で答えた。
眼を閉じ羞恥心に上気した横顔。手の甲に触れる紅潮した少女のような頬が、私の加虐趣味を惑わす。力を無くした両腕を背中に廻し、引き抜いたベルトで手首を締め上げ、チコの背中を膝でベッドに押し付け、細いパンツを強引に引き抜いた。欲情を魅了する、黒いガードルの小さな尻。艶めかしい光沢を帯びたパンストの脚。乱暴にガードルごとパンストを膝まで引きずり下ろし、黒いサテンのパンティーに指を掛け、一気に捲った。
「チコ、妙子はお前のこの身体が欲しいと」
「お前だって」
「この尻に」
「妙子の指が欲しいだろ?」見飽きることの無い、真っ白い柔らかな尻臀をわしづかみした。
声にならないチコの悲鳴に、惑乱した私は、引出しから取り出した潤滑ゼリーを垂らした指先を、閉じた肛門に無理やり突き刺し、チコの逃げる腰を押さえ、掻き回した。
「あっ、嫌!」
「チコ、そんなに締め付けると」
「妙子の綺麗に手入れしたネイルが剥がれる」
「駄目、許して」

身体の奥で指を鍵のように曲げ、チコの細い首に腕を廻し抱きすくめ、火照った耳朶に囁いた。
「いいかチコ、お前にその気が無くても」
「あの世界では通用しない」
「おまえ可愛さで連れ歩いている妙子も、商売になると分かれば、お前を見る目も変わる」
「だがチコ、やり手の妙子も女」
「女を忘れられなかった」
「若い恋人も欲しい、商売もしたい」
「水商売が長い妙子は痛いほど分かっている」
「恋人を店に立たせるなんて、出来ないことは・・」
「だがな、チコ、苦しむ妙子を見るのも、いいかもしれんぞ」
「そうだろ?」


続く。

チコ 6

新宿の路地裏の喫茶店で、初めてチコと会った。その日すぐに、私と関係を結ぶことを覚悟していたのだろう、ふてくされた態度で、後ろめたい思いを誤魔化していた。少年のような顔立ちと少女のような素肌に惹かれたが、私の流儀で抱く気にはなれなかった。相原には呆れられているが、いつものように難題をふっかけ、私の性癖を理解させ、本気度を試した。私と愚かな交渉を持ちかける輩はいたが、ほとんど連絡をよこす者はいなかった。腕の中で喘ぐチコもその一人だろうと思っていた。縁が無かったと諦めていた矢先、届いた連絡は半信半疑だったが、実際に現れたチコは私の願望をくすぐるものだった。
だがチコは、まだ自分の姿に欲情することはないのは、私には分かっていた。しかしどうだろう、妙子のお節介があったとはいえ、変身を遂げたチコは、素の自分を封印するために、「拘束」を望むが、明らかに自分の姿に情欲の炎を燃やしている。

不自由なチコの身体を仰向けに転がし、足首に絡まる下着を投げ捨て、捩れた性器を握った。つぼみのような幼い性器は手の中でみるみる角度をつけ、包皮を反転させ、充血した亀頭を露出させた。
「妙子が欲しがるわけだ」
「チコ、妙子に見せたのか?」
首を激しく横に振った。
「そうか、まだか・・」
「今度見せてやらないと」
「この可愛いおちんちんを」
「嫌!」
手触りの良いニットを捲り上げ、胸に食い込む、パンティーとお揃いの黒いサテンのブラジャーを緩めた。荒い息で上下する小さな乳首。摘んだ指の間で、すぐに反応し、薄く開いた唇から切ない溜息をもらし、背中を反らせた。

私は汗ばんだ胸元に張り付き妖しく光る、妙子のダイヤの十字架を首から外した。ブランドマークのクラスプの裏に符丁のように「obey」と彫らせたペンダントをチコの鼻先で揺らした。
「チコ、このペンダントは」
「妙子が赤坂の場末に、初めて店を構えたとき」
「首にかけた」
眼を見開き、息を呑むチコ。
「妙子も罪なことをする」

何時になく濃厚な刺激を与え、絶頂への呼び水を溢れさせ、脈打つチコの性器にペンダントの鎖を幾重にも巻きつけ、窒息しそうに変色した亀頭を握り締めた。
「嫌」
「駄目です」
「妙子さんの預かり物」
「大事な御守だって」
「御守だと?」
「笑わせるな!」
「でも、でも」
「汚すわけには」
「眼を開けろ!」
「妙子の御守を」
「お前の精液で・・」
全身を戦慄かせ、戻ることのできない破裂しそうなチコの性器。
「許して」
「逝け!」
十字架を摘んで開いた亀頭の先端に強く押し付けた。
噛み締めた唇からな絶頂の叫びが漏れ、腰を何度も跳ね上げ、噴出した大量の精液でダイヤの輝きが消えた。
「いいぞ、チコ」
「いい子だ」
「チコ、いい子だ」

満足した私は、投げ出したチコの黒いペディキュアが光る足首を交差させ、身体を二つに折り曲げ、上を向いた息づく肛門に性器を充てがった。観念したようにチコは、顎を上げ口を開き、悲鳴混じりの長い息を吐き、私はへこんだ肛門に性器を埋め込んでいった。
髪を振り乱し眉間に皺をよせ、上ずる声を震わせ、痛みに耐える可愛いチコ。
「チコ、痛いか?」
「チコ、苦しいか?」
「よ、よしむらさん・・」
「チコのすべてが」
「あなた・・」
「あなたへの」
「服従です」
「チコ!」
「お前は、お前は!」
「このペンダントのこと」
「知っていたのか!」
「そうかチコ、それなら、妙子と仲良くしてやれ」
「いいなチコ、仲良くだぞ」

チコは同じ定めを背負った、あの頃のうぶな妙子のような悲痛な呻き声を絞り出し、私はチコの身体の奥深くに性器を沈め、隷属の契りに頬が緩んだ。



拙いお話はここまで。お付き合いに感謝いたします。

チコ 7


当ブログに、初めてご訪問していただいた読者の方は、お手数で申し訳ありませんが、カテゴリ(チコ)からお付き合いくだされば、嬉しい限りです。


お日柄が良かったのか、ホテルのロビーは正装した人々で賑わっていた。正面に飾られた豪華なアレンジメントの前で記念撮影をする、着飾った若い女性たち。彼女たちを囲み、談笑する派手なネクタイをしたスーツ姿の男たち。引き出物が入った大きな紙袋を下げた披露宴を終えた出席者と、これから披露宴に向かう人々が行き交う中をすり抜け、エレベーターホールに向う僕を呼び止める声に驚き、足が止まった。
「杉崎君?」
振り向いた視線の先には、見覚えのある女性が笑顔を向けていた。
「あっ、紙谷さん」
以前勤めていた職場の先輩だった紙谷優子とは、退職してから初めての再会だった。披露宴に呼ばれたのだろう、淡いパープルのカクテルドレスで着飾り、色香さえ漂わせる大人の女性の雰囲気を醸していた。
「しばらくぶりね、杉崎君が辞めてから一年以上なるかしら。元気してた?」
「ええ、どうにか。今日は結婚式ですか?」
「うん、大学の友人の結婚式に呼ばれて。これから二次会で、新郎新婦を待っているところ」
「杉崎君は?」
「仕事中でね・・」
「あっ、ごめんなさい、引き止めて」
「いや、構いません。急いでいるわけでもないから」
ビジネススーツとは程遠い、見るからに仕立ての良いスリムなスーツ姿、耳まで覆う栗毛色に染めた髪が、普通の勤め人とは違うことは、紙谷にはすぐに判った。透けるような素肌、細く整えた眉毛、目の前にいる杉崎には団体職員だったあの頃の面影は全く無かった。自分の周りにはいない雰囲気に、退職後の杉崎に興味を覚えた紙谷は、しばらくぶりの再会の懐かしさと披露宴の華やかで高揚した神経がそうさせたのか、杉崎を引きとめ、ロビー脇のティーラウンジに半ば無理やり誘った。

披露宴の出席者で満席のティーラウンジだったが、入り口に立つ杉崎に駆け寄り、丁寧に会釈したウェイターは二人を断ることなく、奥の予約席の札が置かれた席に案内した。ウェイターの杉崎への厚遇に紙谷は驚き、杉崎に益々興味が惹かれていった。
「杉崎君はよくここに来るの?」柑橘系のコロンが微かに香る杉崎に顔を寄せた紙谷は小声で言った。
「まあ、よくって程でもないけれど、ボスの仕事場が上のホテルの部屋にある関係でね」
「そうなんだ、今はそこに勤めているのね。どんな仕事してるの?」
「ボスの秘書みたいな、ほとんど運転手だけれど・・」
自分のしていることが、仕事と言えるだろうか、杉崎本人にさえ判らなかった。初めは自分の隠していた性癖を満足させるためか、それとも平凡な日常生活に刺激を求めていたのか、ある男から芳村を紹介されたのが、きっかけだった。芳村との関係は想像を超えるもので、見るもの聞くものすべてが自分の愚かな考えを文字通り破壊したが、刺激に満ちた成り合いに芽生えた密かな愛情が、芳村への服従を誓った。
「なんだか杉崎君、ずいぶん雰囲気が変わった」
「えっ、そうかなぁ・・」
「うん、変わった。なんて言うか、妖しい感じがする。私、ドキッとした」
「そんなことないって、紙谷さん少し酔ってるでしょ?」
紙谷さん、スーツの下の僕の身体を想像してごらん。芳村に言われた通りに身体の手入れを施し、そう陰毛までも揃えて、欲情を煽る艶やかな下着に脚を通しているよ。芳村の悦び、芳村はそれを絶対に顔に出すことはしない。僕は芳村の興奮の前に跪く。緊縛を望む僕を蔑視する芳村、それでも硬い結び目が汗ばむ僕の肌に食い込む。身体を貫く楔、苦痛の中で生まれる屈辱的な快感、男の悩ましい呻き声を聞いたことがある?男の激しい絶頂を見たことある?紙谷さん。
「私、少し酔ったのかな・・」
「紙谷さん、おめでたいお酒に酔ったんですよ。男の僕に妖しいなんて可笑しいですよ」
杉崎の満面な笑みに、紙谷は胸の中で芽生えた杉崎への好意のような小さな想いを否定しなかった。

テーブルに置いた紙谷の携帯が振るえ、仲間の呼び出しに紙谷は名残惜しそうに腰を上げた。
「もう行かなくっちゃ、杉崎君、一度食事に誘ってよ」
「いいですよ。僕でよければ、紙谷さんのような素敵な女性に誘われて光栄です」
杉崎の言葉に一瞬笑顔をほこぼらせた紙谷は、急いでナプキンに携帯番号を書き、杉崎のティーカップの横に滑らせた。
「元気そうでよかった。またね」
「紙谷さんこそお元気で、また会いましょう」
紙谷の後姿を見送った杉崎は、少し思案した後、紙谷が置いていったナプキンを二つ折りにしてポケットに仕舞い、ティーラウンジの伝票に芳村の部屋番号と黒田とサインしウェイターに手渡し、芳村に電話した。
「チコです、遅れて申し訳ありません。今から部屋にお邪魔します」
賑やかなロビーには、もう紙谷の姿はなかった。チコは胸元で揺れる、クロスのペンダントをシャツの上からそっと握り、燻りだした欲情を静め、エレベーターのボタンを押した。



突然の古いお話の続きに、面食らう親愛なる読者の皆様にお詫びいたします。

年の瀬のご多忙の中、相も変らぬ拙文へのお付き合いに感謝いたします。


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