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Twitterはじめました

2017.03.13(Mon) | EDIT

今さらながら、Twitterはじめました。

140文字のミニストーリー「Bedtime story」に挑戦しています。

お暇なときにでも覗きにいらしてください。

あんくるアル

リンクの一覧からもどうぞ。


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2017.03.03(Fri) | EDIT

彼の笑顔は僕の心に花を咲かせ、彼の声は僕に安らぎ与え、彼の柔らかな手は僕を孤独な夜から救ってくれる手でした。

ほっそりと長い器用な指。

あの指が僕の肌を撫で、その悩ましい感触が消えることはない。いえ、消えないばかりか日増しに濃くなっていく。


些細な行き違いから逢わなくなって二か月が過ぎた。

今夜もベッドに潜り込んで目を瞑り、彼の指が触れた場所をたどってしまう。

首、胸、乳首、下腹、太腿……

彼の指を思い浮かべながら、性器に指を絡めた。

親指と中指とくすり指で一番敏感なところを包み、人差し指で突端を撫でこする。

彼の指だと触られただけで蜜を漏らし、あっという間に果ててしまうのに、いくら触っても潤むことはない。

彼の指の魔力がこんなにも僕を惑わし疼かせるとは思ってもいなかった。

彼の顔も声も指もすべてが暗闇に消えた途端、呻いた僕は両手を太腿できつく挟み、唇を噛んだ。


枕元で点滅するスマホにゆるゆると手が伸びる。表示されたまさか名前にときめく。

「もしもし」

彼の甘い声が身体の芯まで響く。

彼を求める欲求が強すぎて声が出ない。

「明日逢える?」

「――な、何時ですか」

声が乾いた喉にひきつった。


スマホを胸に抱えていた手が股間に伸び、勃起した性器に触れた。潤んでいた。

彼の腕の中でからだを丸め柔らかな指を夢想し、ゆっくりと目を閉じた。


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夜の訪問者 後編

2016.12.24(Sat) | EDIT

こちらのアルバムは時が下りまして1991年撮影とございます。恩師から独立を許され個人事務所を立ち上げた二年後です。この間にもコレクションがございますが、それはまたの機会とご了承下さい。
このミユキさんと申す方――まあご覧いただければお分かりと思いますが、どなた様が見ても男性だとはお気付きにならないでしょう。
写真月刊誌に発表したフュージョン性の融合と題した私の作品にご興味を持った、遠方にお住いのミユキさんからポートレートの依頼のお手紙を頂きましてね……。
フュージョンは女装が今のように認知されていなかった当時、そのような趣味を持った一般の男性の方にスポットライトを当てる企画でした。いろいろな制約がございましたが、モデル方々には既成概念や常識にとらわれず自由奔放に振舞って頂き、女装への理解にお役に立てたかと思っております。
お手紙と一緒にL版の全身写真が同封されておりました。妙齢の女性のようないで立でしたが勿論男性で、興味が湧きスケジュールを調整しましてご上京願いました。

スタジオにお越し頂き、はじめてご本人とお会いしても男性にはとても見えませんでした。実際お話を伺っていても物腰の柔らかな淑女のようでしたが、普段は男の形で生活していらっしゃるとのことでした。立ち姿とビロード張りの椅子に腰かけて頂きツーポーズ撮影いたしましたが、迷いのない佇まいから放つ妖艶な輝きに撮影意欲に火が付きましてね。ミユキさんのご了解を得て、別に何ポーズか撮影させて頂きました。
その時撮影した写真がこちらです。コレクションを意識してセピアフィルムで撮影いたしました。

お褒め頂き有難うございます。鋲打ちした革張りのソファーにしな垂れるミユキさんは、レンズを近づけると別の表情を見せましてね、まるで私の思惑を知ったように妖しい微笑みを向けるのです。
東京にいる間に欲しいと申されましたので、急ぎラボに手配いたしまして間に合わせました。大層気に入って頂き胸を撫で下ろしました。無理にお願いして撮影しました写真もお渡ししましたところ、羞恥に顔を染めながらも興味を示してくださいまして、プライベートな撮影のモデルを図々しくもお願いしました。
勿論すぐにご返事を頂けないことは承知しておりましたが、もしご了解いただけるなら連絡下さるようお願いしました。
しばらくしましてミユキさんから嬉しいご返事を頂きました。その時有頂天だった私はミユキさんの社交辞令だと気にも留めませんでしたが、電話口で「期待外れかもしれませんよ」と漏らした一言が後々深い意味を持つことねなりましてね……。
やはり貴方様はこちらの写真にご興味が惹かれるご様子で、どうぞお手に取ってご覧ください。ご遠慮はいりません。

スタッフを入れないプライベートな撮影がミユキさんからの条件でしたので、自宅のスタジオで行いました。ミユキさんはこちらで揃えた衣裳から大人しいワンピースを選び、前回の続きよろしく撮影に入りました。
ミユキさんの緊張がほぐれたのを見計らい、少しだけ大胆なポーズを要求しました。
襟元を緩め肩に掛かる黒いブラジャーのラインを露出させ戸惑う女性の表情を、ソファーの上にすらりと伸びた脚、片脚をソファーから下ろし捲り上がった裾からはみ出たピップラインを。自然体ながら男性を誘惑するような仕草と微笑みをレンズに向け、ミユキさんはこうゆうことに慣れているのだと確信いたしました。

休憩を兼ねて少し早い夕食に誘いましたら外食は苦手と言うことで、急遽買い物で出掛けまして……ええミユキさんと二人で。私も若かったので新鮮な気分でした。私の拙い料理でご勘弁してもらうつもりでしたが、ミユキさんの料理の腕前に舌を巻いた次第で。新妻のような仕草に触発されキッチンでも撮影いたしました。
少々のアルコールも手伝い男性経験に水を向けますと、曖昧な笑みではぐらかされましたが、自分の思い描いている恋愛は難しいとのことでした。
気に入ってくださったフュージョンの未発表作品をミユキさんにご覧いただきました。
私の提案を受け入れてくれたモデルにセクシャルな撮影を行ったものです。下着姿でエロティックなポーズから、私の趣味を押し付けたことでもありますがSM的なものまで撮影いたしました。後日私のコレクションに加わったモデルさんもいらっしゃいます。

私の意図を察したミユキさんの撮影の続きに入りました。ミユキさんは臆することなく大胆な下着姿を披露してくださいまして――ご覧いただいているのがその写真です。
肌蹴けた胸を覆うレースに縁取られた黒いブラジャー、パンストから透ける魅力的な黒い小さな下着。雪国生まれのミユキさんは色白の肌を引き立たせる術を分かっているようでした――しかし……それ以上の撮影は叶いませんでした。いえ叶わないという言葉は適切ではありませんね、撮影にならなかったということです。

なぜかと申しますと、私とミユキさんが同じだった――端的に言えばミユキさんもサディスティックな性癖の持ち主だったということです。
ミユキさんの場合も相手はマゾスティックな性癖の男性ですが、女性からではなく完璧に女装した男性、ミユキさんからの加虐に耐え性的興奮を煽られ、女王ミユキに傅く……。
私は知り得なかった同性の倒錯した深い関係もあることを知り、勉強不足を反省いたしました。電話口でミユキさんが呟いた「期待外れかもしれませんよ」の意味もその時納得いたしました。


さて最後は今夜の貴方様のお姿を拝見して、ぜひともご覧頂きたいコレクションでございます。一番ご興味を惹かれるかと思います。一昨年のちょうど今頃撮影したものでございます。
マナミさんと申します。外資系の会社にお勤めの男性で、女装をはじめた切っ掛けは激務からのストレス発散だと伺っております。どうぞご覧ください。
一目でお分かりかと思いますが、貴方様に劣らずチャーミングな容姿をした方でして、ご自分では同性愛者ではなく、女装はコスプレの一種と認識しておられたようです。

マナミさん曰く、中性的な普段着に飽き足らずスカートを求め、女性用の下着を揃え、首下女装と言うのですね、姿見に映るご自分の姿を眺め満足していましたが、ウィッグを被り自らメイキャップするまでには時間が掛からなかったとおっしゃっていました。
今はインターネットで情報も品物も容易く手に入る時代ですから、マナミさんが女性としての完成度を上げていきたくなっても不思議なことではありませんよね。
ご自身を理想の女性に仕立て上げてみますと、身体が女性のもののように開かれていくように思えたと……。

マゾスティック――マゾ性と呼びましょう。マゾ性を秘めたマナミさんは自ら女性化への調教、こちらの写真がそうですが、男性感情を封印するように自縛し、ペニスを模ったディルドで女性的な快感に目覚め、本来は性の対象が異性だったにもかかわらず、同性の性器で犯される快感を妄想するようになったと……。
それでも男性に抱かれることに恐怖と不安が先立ち、それならば同じ秘密を共有する女装者との関係を望んでいらっしゃったのです。
おや、目の色が変わりましたね……

夜の訪問者 前編

2016.12.06(Tue) | EDIT

何からお話しすればよろしいやら……。爺の辛気臭い昔話など若い貴方様にとっては迷惑なことだと承知しております。私のコレクションでございますか、いいいえコレクションなどと大それたものではございません。何処の誰から聞き及んだのか存じませぬが、今夜わざわざお越しくださった貴方様にご覧頂くのも何かのご縁でございましょう。そう畏まらずお寛ぎ頂きますようお願い申します。

そもそもそうゆうことに目覚めたのは十代の頃でございます。思春期を迎えた頃でございます。どなた様もそうでしょうが性への目覚め興味が膨らんだ頃でしょう。
同級生に、仮にN君といたしましょうか、N君という少々おませな友人がおりましてね。
帰り道が同じ方向だったことから、毎日のように一緒に下校して寄り道もしておりました。昔はよく空き地に処分に困ったのでしょう、エロ本が捨ててありましてね。雨に濡れて表紙が変色したようなものばかりでしたが、時々新刊書と見間違えるようなものが捨ててありましてね、好奇心旺盛な頃でしたから食い入るように見ておりましたよ。そんな私を見てN君は子供だましだと言ったのです。聞けば家にはもっとすごいのがあるって言うじゃありませんか。

N君のお父様は旧大蔵省にお勤めの方で謹厳実直を絵にかいたような堅物で通っておりましたが、N君が言うには書斎にエロ雑誌を蔵書し読み耽っているとのことでした。
ある日の放課後でした。N君の留守宅にお邪魔した私は、お父様の蔵書を見せてくれと頼み込みんだのです。渋るN君はなかなか首を縦に振りませんでしたが、私にお父様の秘密をばらしてしまった手前後に引けず、他言無用を条件に見せてもらうことになりました。
煙草の匂いが染み込んだ書斎に硝子戸の立派な本棚がありましてね、中に大蔵省発行の書物がぎっしり詰まっておりましたよ。勝手知ったN君は数冊抜き取ると奥に隠されていた小さな雑誌を取り出してくれましたね、私はその時初めてSM雑誌というものを見たのです。青天の霹靂とはオーバーでしょうか……。内容は貴方様もご存じのものですが、確かにN君の言うように捨てられていたエロ本とは比べ物になりませんでしたよ。その後もN君を急っついてはお父様の愛蔵書を見せてもらっておりました。

N君は男女共学の公立の進学校へ私は私大付属の男子校に進学して疎遠になりましたが、駅で同じ制服の女生徒と仲睦まじいN君の姿を何度か目撃したことがございましたよ。
私といえばむさ苦しい男子校で、勉強が出来るわけでもスポーツが達者なわけでもなく異性との付き合いなど皆無でしたね。その時分私はニキビ面でね、それがなんだか性欲的な事柄に関係しているような気がして、恥ずかしくてしょうがなかったのです。
だからと言うわけではありませんが、電車に乗り遠い街の書店まで出向いては買い求めたSM雑誌にエネルギーの捌け口を求めていましてね、あらぬ妄想を掻きたてておりました……。
どうでしょう、喉湿しにとっておきの洋酒がございます。お付き合い願いませんでしょうか。左様で有難う存じます。

美味しゅうございますか、恐れ入ります。
付属校でしたから早々に進学が決まり卒業を控えた日のことでした。一人の下級生から一度でいいから抱いてくれと頼まれたことがありまして、ヒロユキ君と申します。真剣な眼差しで頼み込まれれて……。
自分では気が付きませんでしたが、私から同じ匂いを嗅ぎ取っていたと言っておりました。男子校ならではの噂話はいろいろ聞いておりました。経験はありませんでしたが、雑誌からの受け売りで妙に性的な知識だけは豊富で同性愛に偏見はありませんでした。ヒロユキ君は同性愛の女役になることを熱望しておりました。
いや失礼いたしました。貴方様がお出で頂いたご用件を失念しておりました。申し訳ありません。

これが私の撮り溜めたアルバムでございます。貴方様からお電話頂いて用意しておきました。お話を伺ってご興味が惹かれるものをと考え、とりあえず貴方様と同年代の被写体のものを選んでおきました。どうぞご遠慮なくご覧ください。
その一番古いアルバムの写真がお話したヒロユキ君です。画像が荒れているのは自分で現像したからです。押入れを暗室に仕立てておりました。
白皙とでも申しましょうか、顔立ちの整ったいかにも秀才らしい風貌でしょ。華奢な身体から滲み出る中性的な色香に当てられました。
二度目に関係を持ったとき持参した洗濯ロープで両腕を背中で拘束しまして、いいえ、ヒロユキ君は嫌がりませんでした。写真を撮られることは躊躇しておりましたが、疼く身体を丁寧に慰めて信頼関係を結びました。これがその写真です。

初めてのことで私も興奮していたと思います。ちょっとピントが甘いですがレンズに向ける潤んだ瞳に自分の性癖が痛く刺激を受けましてね。愛読していたSM本に女王様に傅くM男性の読み物があるのですが、自分が女王様になったような錯覚を覚えましてね。
性別を超えた欲望が自分にもあることを知らされました。いえいえ叩いたりはしません。そうゆうことは私の性分に合わないのです。
ずっとそうですが、同性だからこそ分かる焦らしの歓びとでも言いましょうか、不自由な身体で悶え苦しみに耐えたご褒美をですね、最後の最後に与えることで私は満足しております。それが私に出来るヒロユキ君への唯一の愛情表現とでも申しましょうか……。
可愛いですか。気に入って頂けましたか。ヒロユキ君の膨らみきったおちんちんが破裂した瞬間は、当時の私の技量では撮ることはできませんでしたが、熱い歓びの感触はいまだに手に残っております。


どうぞご遠慮なさらずにお注ぎしましょう。身体が暖まりますから……。
こちらのアルバムの子はユウジ君と申しまして、ああここに書いてあります。1978年撮影。夜間の写真専門学校に通っていた頃です。仕事ではカラーで撮りますが、仰る通りコレクションはすべてモノクロでございます。モノクロ特有の陰影が好きなのです。
ユウジ君の前にスナップ程度のものが何人かございますが、こんなに撮り溜めたことはございません。ユウジ君からはいろいろなことを学びました。どうしたものか写真を撮ることを生業にした私に、タレントさんの写真集の依頼がある度に、ユウジ君とのことが思い出されます。

ユウジ君も好青年と言うか、どこか幼さを残した美少年とでも言いましょうか、大変おとなしくて撮影に入ってもどこか冷めていました。男性経験はあるとは聞いてはいましたが、どこか浮かない素振りで、相手が求めることと自分の求めていることのギャップに悩んでいる様子でした。
お互いに気の乗らない撮影が続き、撮影したフィルムすべてを焼却しようとした日に、最後と思い自分の趣味をユウジ君に押し付けたのです。女性の下着を穿かせたのです。ごく普通の股上が深い股間とお尻がすっぽり隠れる下着です。豹変いたしましてね。ユウジ君は勃起した性器を下着で隠すこと、肌に貼りつく下着でヒップの丸みを意識することで性癖を満足させていたのです。

この写真がユウジ君のお気に入りです。ベッドの上でうつ伏せにさせ両腕を背中で拘束しウエストをきつく縛ってヒップの丸みを強調させています。こちらは下着をヒップに食い込ませています。実はユウジ君は自分の性器を見るのも見られるのも嫌なのでした。と言いましても貴方様がよくご存じのように女装するわけでも女の身体のようになることとも違う――この二冊のアルバムに約100枚の写真がございますが、性器が映っている写真は1枚もございません。
こちらは軽井沢へ撮影旅行に行った時のものです。人気のないシーズンオフの別荘地で野外撮影したり、たった二泊三日の旅行でしたがご覧いただければお分かりと思います。濃密な時間を過ごしました。
ユウジ君へのご褒美が気になりますか……。アナルの折檻に耐えた褒美に下着の上から愛撫します。漏らした体液で下着を派手に濡らして性器の輪郭が透けて見えておりましてね、この写真などがそうです。不自由な身体を何度もバウンドさせて下着の中で射精して、烈しい絶頂を見届け、私も深い満足に浸るのです。

おや少しお酔いになりましたか。目が虚ろになっておりますね。夜はまだ長ごうございます。
それでは貴方様が一番にご興味ある女装者のアルバムをご覧頂きましょうか……。

つづく。


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音楽夜話 最終回

2016.11.20(Sun) | EDIT

こんばんは アルです。歌は世につれ世は歌につれ、星の数ほどある名曲の数々、その名曲の中に登場する主人公が歌ったり聞いていた曲をあれこれ推理するプログラム『夜の名曲探索』のお時間がやってまいりました。お相手はこの方!
「ウィース!みなさん、こんばんは。2年ぶりの登場、都内某高校に通う、花なら蕾永遠の17歳佐々木好和どえース」

好和ちゃんお久しぶり、どう調子は?
「ボチボチでんな。それにしてもアルさん更新に時間が掛かりすぎ。読者のみなさんブログ離れしちゃったよね。還暦迎えたら急に老けましたね」
――自分でも老けたと思うよ。体力気力が落ちたね、やらなきゃいけないことが山積みなのに一日があっという間に過ぎちゃってさ、面目ない。
言い訳じみているけれど、中途半端だった『チコ』の落とし前がやっと付けられたよ。
『チコ』はもともとSM話から派生した主従関係を柱にした話しにするつもりだったのだけれど、上手く書き進められなくてね。
昨年暮れ主従関係の話を書くことを宣言しちゃったものの悪戦苦闘してね、10か月も掛かっちゃったのよ。
読者の皆様が要望するSM話とは全く違っていることは承知しておりますデス。

「ところでアルさん今回の『夜の名曲探索』なんだけれど……」
実は皆様にお知らせがあります。14年8月30日の『夜の名曲探索』で10以上の拍手を頂いたら『夜の名曲探索二夜』を書くことを宣言しておりました。親愛なる読者の皆様から貴重な拍手を頂き、あれよあれよと9拍手までこぎ着けましたが、残り1拍手を頂くまでに1年と数か月。(笑)今年初めにどなたか存じませんが拍手を頂き、10名様限定とばかりにネタを仕込んでおりましたよ――しかし……。

「しかし、どうなっちゃったのよ。二夜では玉置浩二の曲を探索することになっていたでしょが。仕込みが出来なかったとでも言うのオイ!」
好和ちゃん、仕込み云々ではなくて、『夜の名曲探索』が著作権違反で記事が削除されちゃったのよ。
「著作権違反!デスカ!こんな場末の寂れたブログの記事が著作権違反……」
そう。いろいろ調べたのよ。個人のブログに直接動画やリンク、さらにはキャプチャー画像もアップすることは法律違反ということね。著作権の強化が叫ばれている昨今、勉強不足でした。反省しています。

――ということで、今までのような体裁の音楽記事はアップできないの。不定期にアップしていた『音楽夜話』は今回が最終回ということで……音楽記事に拍手、コメントを頂いた読者の皆様にお詫び申し上げます。


「チェ、ジジイのおふざけに付き合ってやろうとしばらくぶりに登場したのに……。まあ法律違反じゃしょうがないな。アルさん今更だけど、取り上げるつもりだった玉置浩二の曲って?」
『メロディー』
歌詞に♪みんな集まって、泣いて歌ってたねぇ~という一節があって、泣きながら歌った曲は何だったのか……気にならない?
「ふ~ん。今回もどうでもいいようなこと気になりますね」
「確かに『メロディー』いい曲ですね。玉置浩二、巷では奇人奇才とか言われていますが、作曲の才能歌の上手さはダントツですよね。ヨッシャ!アルさんのオフザケに好和お付き合いしませう」
オイ!
――まあ、好和ちゃんがそう言ってくれるなら気を取り直して『夜の名曲探索二夜』取り上げまするは、玉置浩二の『メロディー』。
好和ちゃん曲紹介お願いします。

「ウイッス。『メロディー』は安全地帯休止後1996年ソロでリリースした玉置浩二作詞作曲のバラードの名曲です。少年時代から彼が聞いていた歌へ、リスペクトを込めたと語っています。それではレッツ・プレイ!と言いたいところだけれど……やりにくいですネ。エヘヘ」

「確かに♪みんな集まって、泣いて歌ってたねぇ~という歌詞がありますね」
好和ちゃんは、彼と仲間が泣きながら歌った曲って何だと思う?
「彼は学生時代からバンドを組んでいたから、洋楽のコピーもやっていたでしょうから洋楽かなとも思うけれど、みんなで口ずさむとなると、やっぱり邦楽でしょうね。その後の『安全地帯』としての活躍を考慮すれば、当然邦楽かと。あと男性シンガーの曲だと思いますね」
ホイホイ。さすが好和ちゃん目の付け所がいいわ。私も邦楽だと思う。以前どこかで彼は沢田研二が好きだって見聞きしたことがあるのよ。
「ジュリーですか……ヒット曲多いですよ。現在58歳の彼が少年時代に聴いていたとなると、『タイガース』?」
そう、私ね『タイガース』の名曲『銀河のロマンス』かと思うのよ。

「う~ん『銀河のロマンス』ですか……」
好和ちゃん、その顔は異論があるようね。
「ええ。『銀河のロマンス』が流行ったのは1968年、グループサウンズ絶頂期の頃ですね。今から48年前彼が10歳の時ですね。時代的には合っていると思いますよ。合っているけれど『メロディー』の歌詞にノートに書いてあるピースマークというフレーズが出てきますよね」
うん出てくる。
「僕思うに、ピースマークが日本で一般的に使われだしたのは70年代からだと思うのですが?」
好和ちゃん、今回はいつになくマジメね。
「――僕がこのブログに登場するのは今回が最後かと思うと……(ノД`)」
まあ音楽関係の記事は今回が最後だけれど、またどこかで呼んであげるから。気を取り直してヨシヨシ。ということはもっと後の曲?
「のような気がします。確かにバラード曲『銀河のロマンス』は覚えやすい歌詞で、あの頃誰もが口ずさんでいましてけれど、どちらかと言えば独唱曲で、みんなで歌う合唱にはちょっと……」

フムフム。となると『タイガース』解散後のジュリーのソロデビュー曲、『君をのせて』かしら?
「1971年発売『君をのせて』。サム・クックのヒット曲を彷彿させる名曲ですが、これも合唱にはどうかな」

フムフム。それでは好和ちゃん、君が選んだ曲は?――オフザケするなよ浅田美代子はもう使えないぜ。
「エヘヘ。分かっておりやす。演歌の名曲とも違います。それでは僭越ながら、僕の選んだ曲は(ドラムロール)堺正章『さらば恋人』!♪さよならと書いた手紙~」
ホヨ~。
「同じく1971年発売『さらば恋人』。『スパイダース』解散後のソロデビュー曲、作曲は歌謡界の巨匠筒美京平、作詞はフォーク界の詩人北山修。当時流行っていた洋楽ポップスを驚愕するメロディーとアレンジ。誰でも口ずさめる歌詞。独りで歌ってもよし合唱してもよし。いつまでも色褪せない名曲でしょ。どうよ!」

お見逸れいたしました。マチャアキとは思いつかなかったわ。センチメンタルな別れの歌ね。♪悪いのは僕のほうさ、君じゃない~胸に染みる。私も異論はないわ。
「結論!玉置浩二『メロディー』の中で歌われた曲は『さらば恋人に』決定!」
パチパチ!

そうそうマチャアキで思い出したわ。好和ちゃんマチャアキの切り抜きを持って美容院に行って、こうゆう髪型にしてくれと頼んだら美容師に大笑いされたことがあったわよね。
「ええありましたよ。ミック・ジャガーって言ったって分かんないだろうから。でもマチャアキ、ファッションセンス抜群だったんですよ。今もそうだけど」


今回も深夜のファミレスでの与太話よろしく好き勝手なことを言い合った『夜の名曲探索』いかがでしたでしょうか。登場する名曲にご興味を覚えた読者の方が、動画検索にて視聴してくだされば嬉しい限りでございます。それでは皆様……
「チヨット、チョット待ちなはれ!もう終わっちゃうの?音楽記事の最終回でしょ。僕の出番がなくなるのに、アル公冷たくない?」
まあそうね……。
「いつかキャロル・キングのことを書くって言ってたよね。前回『スローバラード』の歌詞の中でラジオから流れていた曲を探索したとき、キャロル・キングの『will you still love me tomorrow』に決めたときにさ。もうチャンスないよ。キャロル・キングに音楽の嗜好を宗旨替えされたって常々言っていたくせに」

確かに……。でも今までのようにリンクも貼れないし、そもそも音楽の話題に興味を持ってくれる読者の方は少なくて、ブログを訪れてくださる皆様の求めるものとかけ離れているから……。
でも折角好和ちゃんを呼んだんだから、もう少し与太話続けてもいいわ。
「そうこなくっちゃ。ケネディセンター名誉賞のことでしょ?」
そう名誉賞のこと。ウィキペディアによると、1978年から毎年アメリカで優れた芸術家に贈られる賞で、受賞者の発表は9月、授賞式は12月第1日曜日にホワイトハウスで大統領夫妻から贈呈される。祝賀公演が12月にケネディセンターで開催され、CBSテレビで録画放映されるとのこと。

「アカデミー賞やグラミー賞に比べると、意外と新しい賞ですね」
そうなのね。賞の選考基準は優れた芸術家にということだけれど、受賞者の顔ぶれをみると年功序列というか、存命中に受賞をさせる配慮かしら50年代に活躍した大物から受賞が決まっているように思えるわ。
「そう言われれば、今話題のディランは97年、スティービーは99年ですね。それでキャロル・キングがやっとこさ2015年に受賞することなったと」
キャロルおばさん72歳よ。アメリカンポップスへの貢献度を知る者にとっては、いささか遅いような気がするけれど、バカラックは受賞しているのかしら……。
キャロル・キングの受賞が決まってから、祝賀公演の模様がアップされるのを今か今かと待っていたわ。

「トリビュートパフォーマンスのことですね」(kennedy center honors 2015で動画検索してね)
受賞者には出演者が誰だか事前には知らせてないそうよ。キャロルの曲をレコーディングしたジェイムス・テーラー(up on the roof)は順当だわね。どこかでキャロルとの関係があるのでしょうね、サラ・バレリス(you've got a friend)もなかなかね。でも圧巻は最後に登場した大御所、アリサ・フランクリン(natural woman)!!キャロルがアリサのために作曲した、リズムアンドブルースの秀作ね。ちなみにアリサ、キャロルと同じ歳なのね。
重病説が伝わり、歌手生命が危ぶまれていたと聞いてはいたけれど、歌のパワーは衰え知らずで、オバマが涙ぐむ気持ちも私にはわかる。何度見ても胸にせまるものがあるわ。

「僕も目頭が熱くなりました。アルさんもう一人忘れてはいませんか?」
好和ちゃん、忘れていませんよ。キャロル・キング以外の受賞者に日本人初の小澤征爾、ジョージ・ルーカス、リタ・モレノ、そして女優シシリー・タイソン。
シシリー・タイソン、マイルスの元妻だったことぐらいしか知らなかったんだけれど、自らの名前を冠したスクールを創設して、慈善事業にも心血を注いでいる女優なのね。

彼女が劇中で歌う讃美歌(blessed assurance 祝福の保証 )をトリビュートしたのが、なんとまあ、私のフェイバリットディーバ、シシ・ワイナンスだったのよ。感涙ものよ。ジラフ柄のワンピースがとってもオシャレ。アリサと並ぶ素晴らしいパフォーマンス!
いいもの見せていただきました。以上。好和ちゃん言い残したことある?

「ハイ!僕もケネディセンター名誉賞つながりで、先ほど話に出ましたが、1999年に受賞したスティービー・ワンダーのトリビュートパフォーマンスをご紹介したいと思います。(kennedy center honors 1999で動画検索してね)
26分20秒の動画ですが見どころ満載!ピアノがハービー・ハンコック、テイク6、スモーキー・ロビンソン。やはり圧巻は盲目の女性ジャズシンガー、ダイアン・シューア―が歌う(I just called to say I love you. 心の愛)。スティービーならずとも涙が出ます」

好和ちゃんお疲れ様です。音楽夜話はこれにてお開き。二人の与太話に最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
「サバラ!」


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チコ 15

2016.11.05(Sat) | EDIT

その晩夕食を済ませた公彦はファッション雑誌を広げた。女性誌など一度も買ったことはない公彦が衝動的に買ってしまったは、微笑む黒田知永子を一目見て、なぜか惹かれるものを感じてしまったからだ。それは美人に目がいくといった普通の成人男子の目線に他ならないと自覚しはていたが……。
黒田知永子はこの雑誌の専属モデルのようで、彼女のスタイル画が巻頭から多くのページを占めていた。ページを捲っては食い入るように見つめる公彦の様子は、贔屓のファッションモデルを真似ようとする女子に見えたかもしれない。
付きあ合っていた男は芳村のような嗜好はなかった。年齢相応の素のままの男子が好みで、公彦に特別な要求をすることはなかったが、公彦に向ける男の興奮は十分すぎる程で、公彦もそれが嬉しく、男以上の興奮を晒しては男の望む行為を受け入れていた。身体の自由を奪われ羞恥に全身を紅潮させ、溢れる快感を滴らせては男の許しを哀願していた。

風呂上がりの洗面所で鏡に向かった公彦は、濡れた前髪を両手で掻き上げてみる。やや面長の見慣れた年相応の男の顔。二十歳過ぎても髭は薄く、職場の女子からは色白だねと揶揄されている。顔を鏡に近づけ横顔を映し、上を向きそして俯く。頬を膨らませ唇を突き出してみる。どの角度から見ても男の顔にしか見えない。ばかばかしくなった公彦は洗面所の灯りを消した。


ある経済団体の職員である公彦の日常がはじまる。作成した資料を持参して会員企業へご機嫌伺いに出向く。行政の経済担当者との会議、企業イベントの手伝い。安定した職業と言われればそれまでだが、贅沢な悩みだが利益を追求する企業と違い、社会人の本分を見失うこともある。
退社時間を見計らったようにリュウからメールが届いた。リュウから相原を紹介され、相原と面会したことは報告済みだったが、相原から会うように指示された芳村という男と会ったことは、男の第一印象の余りの悪るさからリュウにはまだ知れせていなかった。事の顛末を気にしたメールの文面に公彦は夕食の誘いを受け返信した。

買い物客で賑う昼の新宿は夜のなると華やかな色が灯りまた別の表情を見せる。リュウから指定されたビルの地下にあるビストロのドアを開けると、すでにテーブルに座っていたリュウは公彦に片手を上げた。リュウも仕事帰りなのだろう、着慣れたビジネススーツの襟元を緩め寛いでいた。挨拶代わりの乾杯を済ませ、相原を紹介してくれたことに改めて礼を述べる。紹介した手前どうしたか気になっていたよと、リュウは仕事仲間の後輩を気遣う先輩のようだった。

相原とは馬が合ったのかい。リュウの揶揄するような問い掛けに公彦は、相原に悩みを打ち明け我儘な寂しさを吐露したこと、真摯に耳を傾けてくれる相原に付き合っていた男の姿をダブらせ、初対面ながら穏やかな相原に惹かれてしまったことを話した。
さすがに相原から恥ずかしい身体検査を受け欲求不満を中途半端に煽られ、続きは芳村にしてもらえと帰されたことは言えなかったが。
それで相原は……冴えない表情を浮かべる公彦を見て成り行きを察したリュウは溜息をつき肩を落としたが、公彦の話の続きに、傷心の公彦を労わるように運ばれた料理を皿に取り分けていたリュウの手が止まった。
えっ、別な男を紹介された!
相原の性癖を少なからず知るリュウは、公彦を必ず気に入ると考えていた。予想もしていなった展開に思わず声を上げた。

黒田知永子というファッションモデル、名前の知永子からチコと呼ばれていることもリュウは知っていた。その目つきの悪い芳村という男は、チコのようになれと言い残し帰ってしまった。付き合うかやめるか決めるのは公彦次第ということか……腕組みしたリュウは公彦の話を反芻する。不快な気分にさせた芳村の鼻を明かしてやりたいのはやまやまだが芳村の本意が分からない。でも興味があるということかな。悩む公彦の様子を見てリュウは公彦の胸の内を言い当てる。
異性でも同性でもそれぞれ好みがあるということさ。女性は求めてはいない。身も心も女性になりきった男とも違う。一見しただけだと性別の判断がつかない男が好みだということだな。矛盾してないかって、そもそも僕たちははじめから矛盾しているのさ。矛盾した者同士だからお互いの気持ちが分かって惹かれ合って仲良くできるのさ。リュウの理屈が公彦の腑に音を立てて落ちた。公彦が芳村の琴線に触れたことは確かさ。
黒田知永子か……ちょっと似ているかも。ほんのり桜色に染まったリュウは公彦の顔を繁々と見詰め白い歯を見せた。

眉の手入れは自分でも驚くほど上手くいった。職場では特別な決まりはないが、見苦しくない髪型にするようにと規定されている。長髪はもちろん染めている者は誰もいない。
問題のヘアスタイルはウィッグを被ることで解決した。リュウのアドバイスに従い痛い出費だったが値の張るものを注文した。
毎晩、部屋に積まれたファッション雑誌の山を崩しては、白の開襟シャツに細身の黒のパンツを合わることを決め、自分なりの黒田知永子のスタイルを作り上げた。
すべての物が揃った夜更け、鏡に映る自分の姿に公彦から笑みがこぼれた。変身願望があった訳ではなかったが、別人になりきったもう一人の自分を容易く受け入れていた。自然と立ち振る舞いが女性のように柔らかくなってしまうことが不思議だった。
芳村に連絡を取ると公彦はさらなる要求を突き付けられた。それは芳村のフェチズムを押し付けるものだったが、芳村もその気になり、再会の目的が公彦の望む方向に向かったことを理解した。チコのような大人の女性が身に着ける下着で来い。公彦は素直に芳村の矛盾を受け入れた。

期待と不安が交錯した日々を送り日増しに膨らむ欲望を抱え、公彦は待ち合わせの伊勢丹の玄関に立つ。前を通り過ぎる人たちの視線が気になり落ち着かない。
時間通りに現れた芳村は公彦を見るなり満足げな表情を見せ、公彦は胸を撫で下ろした。
迷惑を掛けたと慰労するように芳村は上階のイタリアンレストランへ公彦を誘う。密かな逢瀬のはじまりに胸の高まりを隠せない公彦を、敢えて混雑したレストランに連れ込んだ芳村の思惑。
生まれ変わったようだとはにかむ公彦に向けた容赦のない芳村の加虐の性。突き付けられた理不尽な要求に公彦は凍り付いた。公彦に露出趣味がないことは芳村には分かっていた。イエスかノーか。有無を言わさず無表情で迫る芳村は別れた男の影を霧散させた。
羞恥に指の震えが止まらない。耳まで赤くした公彦はナプキンをテーブルに置き腰を浮かせ、パンツのジッパーが音を立てないように下ろした。隣のテーブルで耳をそばだてていた有閑マダムに電話番号のメモを渡されたのは、今では愉快な思い出になっている。


チコ 14

2016.10.28(Fri) | EDIT

芳村を助手席に乗せ深夜の湾岸線を不慣れなクルマで飛ばしたあの夜、チコは何気ない素振りを装い世話になった妙子の店を手伝う許しを芳村に求めた。やましい気持ちがあったわけではなかったが、車中を選んだのは芳村の顔を正面から見なくて済むと思ったからだ。

チコは妙子から店にいてほしいような意味合いの言葉を度々聞いていた。妙子の役に立つならと、チコの気持ちは固まってはいたが、芳村の許可を得ないことには、いくら妙子の店とはいえ手伝うわけにはいかない。
しかしチコの話を聞いた芳村は取り付くしまもなく、お前に店で何ができると全く取り合わず、自惚れるなとチコの願いをはねつけた。世話になった妙子への恩返しを否定されたばかりか、こともあろうに、妙子と寝てやれと命令された。
芳村をホテルに送り届けたが、困惑と苛立ちに耐えきれず居ても立っても居られないチコは、静まり返った真夜中のホテルへ戻った。

薄明りの部屋で芳村に睨まれ動揺を隠せぬチコは、かるい気持ちで踏み入った芳村との関係が重く辛いことを思い知らされた。命令を拒否することは芳村との関係が終わることを意味していた。チコの揺れる気持ちが部屋の空気までも震わせる。
長い沈黙の末、自分の立場を受け入れたチてコは小さく頷いた。そして後悔とも諦めとも違う眼差しを向けては芳村を誘い服従の掟を求めた。世話の焼ける奴とばかりに乱暴に腕を撮られたチコはベッドに押し倒された。


食後すぐに肩を揉むのは身体によくないと、チコの忠告に唇を尖らせ膨れ面した妙子は、それではと隣の部屋から何やら大事そうに胸に抱えてソファーに座り、隣に座るようにとぽんぽんと叩いた。膝の上で開いた赤いアルバムを覗くとチコの写真が並んでいた。
妙子が選びに選んだ衣裳に着替えたチコの写真だった。衣裳を替えるたびに妙子がコンパクトカメラでチコの姿を撮っていたのは覚えていた。
「うわ、プリントしたんですか」
妙子は口元を緩め頷いた。

あの頃、もちろんチコと呼ばれる以前のこと、杉崎公彦は週末になると新宿の街を当てもなくぶらついていた。そして気が付けば、いつものガードレールに腰かけ向こう側を眺めていた。
並行する明治通りの枝道は車通りも少なく、川に例えれば川幅はあっても流れは緩やかだと言えた。横断歩道の信号が赤からまた青に変わる。向こう岸の街が手招きするように囁きだす。川を渡れば、自分の忘れられないものに出会えるのかもしれない。それでも足を踏み出すことができなかった。帰り道、自分の不甲斐なさを嘆いたが、次の休みにはまた新宿へと出掛けた。

連休の昼下がり、その日もガードレールに腰かけ所在無げな公彦に声を掛けてきた青年がいた。君ここによくいるでしょ。気さくな物言いに顔を上げると人懐こそうな童顔の青年が立っていた。同じ色を持つた者同志の一瞬の了解。孤独と人恋しさに誘われたカフェのテラスでお茶を共にした。

お互い求めるタイプの違いに、それ以上の関係になることはなかったが、どちらが誘うわけでもなく次の週末も二人でお茶を供にした。誰かに胸の内を聞いてもらいたいと思っていた。誰にでも話せることではなかったし、自分の周りには相手も居なかった。向かいに座るリュウと名乗る青年なら自分の気持ちを分かってくれると思った。

公彦は十代最後の歳から数年間、如何なる時もそばにいた男の存在をリュウに話した。リュウは公彦の告白を茶化すことなく真摯に耳を傾けてくれた。
親子ほど歳は離れていたが、母子家庭で育った環境からか、男から受ける父親以上の愛情に溺れていたこと。男が望むサディスティックな行為に歯を食いしばった後の男の優しさ。押し寄せる蕩ける快感に悲鳴をあげたこと。男は主従関係を強要し公彦はそれを望んだこと。

しかし公彦の前から突然に消えた男。時が経ち男の身勝手は許すことはできたが、身体に染み込んだ疼きは片時も忘れられない。
僕には君のよう経験はないが気持ちは分かるよ。男ってずっと引きずるからね……。
—―他人の嗜好にとやかく言うことはないけど、異性とだって同性とだって、それは主従関係ではない。単なるセックスのバリエーションさ。でも君がそれを望んでいるなら……。漏らした本音にリュウからある男を紹介された。

何度も頭の中で言い訳を考えながらも紹介された相原という男に会うまでには時間はかからなかった。温和な初老紳士相原はチコの吐露した想いに静かに頷き、無言で話を聞いてくれた。相原に忘れられない男の姿を重ねはじめた頃、チコは相原からある男を紹介された。その男が芳村だった。

初対面の芳村の印象はよくなかった。神経質そうで大らかだった男とは正反対の印象だった。それでも会ったからには覚悟はしていたが芳村は公彦を求めることなかった。呆気にとられる公彦に芳村は解せない条件を言い残し、今のお前には興味はないとばかりに帰ってしまった。
恥をかかされ理不尽な扱いに腹が立った。数日して腹の虫が収まると、今度は芳村の条件が気になった。モデルのチコを知っているか。チコのように—―憎たらしい芳村の好みに俄然興味が湧いた。どんな顔の男が好きなのか。モデル、チコ。パソコンで検索すると答えは拍子抜けするほどあっけなく分かった。黒田知永子、モデル、愛称チコ。

まさかと思ったが、芳村が好きなのは黒田知永子という女性のファッションモデルだった。芳村が男の自分に何を求めようとしていたのか。公彦はばかばかしさに笑いが込み上げた。黒田知永子の画像すら見る気も起きなかった。
そんな公彦が黒田知永子を目にしたのは、会社帰りに立ち寄った書店でのことだった。
通り過ぎようとした女性誌の棚に置かれたファッション雑誌の表紙に踊る黒田の名前が目に入った。ふと足を止めた公彦は豪華な雑誌を手に取り、ページを捲った。

黒田知永子はショートヘア―が似合う大人の女性だった。派手さはなくどちらかと言えば落ち着いた雰囲気を醸していた。髪型からなのだろう、ボーイッシュでどことなく中性的な容姿に思えた。公彦は何故だか惹かれるものを感じた。芳村の好みは中性的な雰囲気の男なのだろうか。チコのように、チコのような……男。
公彦は雑誌を手にレジに並んでいた。


つづく。


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